僕はまだまだできる事の少ない
この身体のまま
長かった病院生活が
ようやく一区切りを迎えた。
白い壁に囲まれた毎日から
外の光へ。
手元には
使い込まれたメモ帳と
短くなった鉛筆。
幾度もぐしゃぐしゃにして
それでも捨てられなかったページがある
そこには
震える字で刻まれた「ら」の文字。
僕はこの努力を残しておきたかった
記憶だけはまだまだだけど
みんなの名前を忘れることだけは
無くなった。
医師はそれだけで充分成長だと
言ってくれた。
家に帰り僕は着替えることにした
僕が着替えていると
僕はボタンにつまずいてしまった
ボタンを留めるだけなのに
指先が思うように動かず
僕は何度もつまんでは落とし、
つまんでは落とした。
どんどん焦り、震えも強くなっていた
その時、
そう言ってリトくんが
僕の部屋に入ってきた
そして僕の様子を見てリトくんは
少し目を見開いた気がした。
そう事実を口に出されると
僕は何も言えなくなった
そういうとリトくんは
僕の後ろに立ち
僕の手を優しく包んだ
そして僕の手に触れながら
優しく優しくひとつずつ
ボタンを留めてくれた
そして最後の1個だけは
僕に1人でやらせてくれた
僕は上手に留めることができた
そして僕は服を畳もうとすると
もう畳んでくれていて
リトくんは僕の手を取り
リビングまで連れてってくれた
するとみんな集まっていて
みんなで僕の名前を呼ぶ
僕はこの温かな場所に
戻ってこれたことが
何よりも嬉しかった
そしてゆっくり話してるうちに
夜になり僕らはご飯を食べることにした
僕が箸を持つと
その指が思うように動かず
ただ白いご飯を口に運ぶだけなのに
腕が震え、米粒は落ちていってしまうし
箸も手から落ちてしまった。
僕はそんな自分が情けなくて
声にもならず、思わず下を向いた。
その瞬間
隣に座っていたテツくんが
スッと手を伸ばし
僕の落とした箸を拾い上げてくれた。
茶碗を持ち直そうとすると
指先に力が入らない。
落としそうになった瞬間
カゲツくんが茶碗の底をそっと支えてくれる。
小さく呟く僕に
ロウくんがふっと笑った。
悔しさと恥ずかしさで
つい声が震える。
でも、再び箸を動かし
ゆっくりご飯をつまむ。
震える指先の先で
たった一粒の米が箸に乗った。
そして
それを口に運んで噛みしめた瞬間
胸の奥がじんわり熱くなる。
マナくんが笑顔で言った。
ショウくんは頷いて
涙がこぼれそうで、僕は慌てて下を向いた
ご飯の温かさが
いつもよりずっと深く心に沁みた。
ご飯を食べたあとみんなで
リビングで落ち着いていると
僕は静かなこの空間で声を発した
そう僕は歌えた
するとみんながこっちを見つめていた
僕はニヘリと笑うと
そういうとテツくんは
僕に耳打ちをして
僕は曲を調べて頭の中の
メロディーを遡り歌った
その曲は僕のオリジナル曲…
テツくんは自分でリクエストしたのに
泣いていて
みんながお前はなくなや!
などとツッコミをしていて
とても暖かかった。
次の日僕はマナくんと
事務所に向かっていた
まだ電車は厳しいので
タクシーを呼んで
僕らは事務所まで向かっていた
事務所につき
僕らはゆっくりと
入るとそこには見覚えのある先輩が
立っていた
僕はペコッと挨拶をして
マナくんの袖口を引いた
そして僕らはマネに連れられ
会社の人達と話すことになっていた
会社の人たちはみんな
名札を付けていた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。