第2話

変わらない、なんて
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2026/01/07 04:03 更新
「おっ髙地!」

呼ばれて顔を上げると、ジェシーは手を振っていた。
いつも通りの声。いつも通りの笑顔。
何も変わっていないーーそう見えた。

「何ぼーっとしてんの?」

「別に」

反射的にそう返して横に並ぶ。
肩が触れる距離。
それだけで安心してしまう自分が、少し悔しかった。
ジェシーは楽しそうに話していた。
仕事の事、昨日見た動画の事、どうでもいい冗談。


そのどれもが、昨日までと同じはずなのに。
(…同じ、じゃないんだよな。)

髙地は横顔を盗み見る。
笑うたびに揺れる表情の奥に、自分の知らない時間がある。
誰かと過ごした夜。
誰かに向けた声。

「髙地」

不意に名前が呼ばれて、心臓が跳ねる。

「なに?」

「なんか今日静かじゃね?」

見透かすような目。
いや、ただの無邪気な疑問。
それでも、胸の奥を触られた気がして息が詰まる。

「そんなことないよ」

嘘だった。
正確には全部を言わないないという選択だった。

ジェシーは首をかしげて、それ以上踏みこんでこなかった。
その優しさがありがたくて、苦しい。

沈黙が落ちる。
でも、気まずさは無い。

ただ、言葉にならないものが、2人の隙間を満たしている。

「…なあ」

ジェシーが前を向いたまま、ポツリとつぶやいた。

「俺さぁ、髙地が隣にいないと変な感じするんだよな」

一瞬、世界が止まった。

「は?」

「いや、なんつーの安心するっていうかさ」

軽い調子。
いつものジェシー。
でも、その言葉は、髙地の中に深く静かに潜っていった。

(それ以上言わないでくれ)

期待してしまう。
勘違いしてしまう。

それでも…

「俺も…」

気づいたらそう答えていた。
ジェシーが笑う。

「だろ?」

その一言で全てが元に戻ったような気がした。
でも本当は何も戻っていない。

変わらないふりをして、
変わってしまった距離を、2人ともちゃんと感じている。

それでも今日も隣に立つ。
手を伸ばせば届く距離で、触れないまま。

名前をつけてしまったら、きっと、今の形は壊れてしまうから。

だから、まだーー
この感情は胸の奥にしまったままで良い。

少なくとも、
ジェシーが笑ってくれる間は。

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