白亜の会議室の卓上、清潔すぎる光が書類と珈琲に反射する。
篁は着席しながら、流れる空気の微妙な緊張に眉をひそめていた。
他の隊員たちも顔をそろえている。
レーネは沈黙を武装にして座り、サリュスは無意味に書類をめくるふりをして背もたれに身を預けている。
そこへ、重い扉が静かに開いた。
入ってきたのは、黒いマントを羽織った細身の男。銀縁の眼鏡が光を弾く。
――天使の輪本部から派遣された査察官、セルジオ・エンリレ。
「皆さん、お忙しいところを申し訳ありません。私は本部査察室、セルジオ。
本日よりしばらく、貴殿らの働きと環境を監査させていただきます」
礼儀正しい口調の奥に、さざ波のような威圧感。
篁の隣でサリュスがこっそり舌打ちする。
「また退屈な茶番が始まるな……」
セルジオは着席し、書類を机に広げ始めた。
一人一人の顔を順に見やり、最後に篁に視線を止める。
その目の奥にかすかな興味――あるいは探るような光を感じさせた。
「特に、篁隊員。過去の実績についても詳しく……本部で噂を聞いています。
今後のご協力、期待していますよ」
静かに微笑しながらも、その言葉は鎖のように重かった。
会議が進むにつれ、篁はこの監察官が「何かを探しに来ている」気配に気づく。
単なる規則の確認ではなく――もっと深い「真実」や「秘密」に迫ろうとしている。
(“選び直したはずの現実”は、本当に正しいのか? 俺たちは試されている……)
会議室の壁には、美しい聖者の絵画。だがその影はどこか不穏に揺れていた。
――こうして、“天使の輪”にまた新たな波風が立ち始める。
篁は椅子に身を沈め、静かに、しかし鋭く査察官の動きを見据えていた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!