やっぱりこの目だ。分かってたよこの目。え?アイツおかしくね?みたいなさ、そんなもの知らないフリをして校舎へと入る。1番確認したかった部屋を探す。
音楽室。ずっと憧れでこの高校で1番楽しみにしていた場所。ドアのガラス越しに中を覗く。
この学校、翠青学院は第二音楽室がとてつもなく綺麗だ。前、オープンキャンパスのパンフレットを見たのだが、さらさらとした木製の床。ガラス張りの天井。そこから入る日差し。黒いグランドピアノ。もうこれだけの為に入学したようなものだ。
だが、しかし
この学校は近年入学式や体育会、全ての行事に手が込んでいる事が話題となり人気となっている。
そんな事を知っていて人見知りの自覚があるならこの学校に行かなれば良かったじゃないかと思われるだろう。確かに僕もそう思う。だが昔は全校生徒214名のみのとても小さな学校だった。これが少なくないと言えるなら何を言っているんだとなるが、音楽室の美しさや学科に惹かれ、これくらい少なければ大丈夫と油断していたのだ。
しかしここまで人が増えるとは……
受験の時は母に応援してもらって、被らなかったバケツを、玄関から出た瞬間、学校に行く人々、制服が一緒な事を確認したと認識して気付いたらバケツを被って学校へ来ていた。
問題はこの後の入学式だ。がくがくと震えすぎて横の人に気味悪がられはしないだろうか。ロッカーから無意識にバケツを持ってきてまだ自分のことを見ていない人に変な目で見られないだろうか。もう既に嫌われていて気味悪がられている事を自覚しながらも恐怖が襲ってくる。呼吸して息を吐いて、肺がもっと重くなってくように感じた。
そんな時後ろからぱちぱちとあの上靴特有の音がした。
同じ事…と言うのは音楽室の事だろうか。バケツの子という事を知っているという事はまだ顔を見ていないということ…と思うと咄嗟に僕は顔を隠した。
その動作を見ると彼女は少し笑って言った。
と、彼女は全てを見透かせそうな澄んだ青眼で此方をちらりと見る。恥ずかしくなって目線を下に向けると彼女の手には音楽室の鍵と思われる物があった。僕は本能的に声を出していた。
最初、もごもご言ってしまった。恥ずかしい。これこそ穴があったら入りたい。
そう言いながら器用に鍵を開ける。彼女は楽しそうに音楽室に入っていく。どうすればいいのか分からず僕は立ちすくしたままだった。
と、首を傾げられる。僕の足は音楽室へと入っていった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。