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第1話

第1章:至高の支配者の氷の執務
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2026/02/27 17:09 更新
――L-CORP本社、最上階のCEO室。
全面ガラス張りの向こうには、世界を支配する大都市のパノラマが広がっているが、室内は外の喧騒が嘘のように静まり返り、室温さえも数度低いように感じられる。
レオン
……それが、君の出した結論か?
192cmの巨躯を高級な革椅子に預け、レオン・ストラトスが冷淡な声を放った。

デスクを挟んで立つ役員たちは、蛇に睨まれた蛙のように硬直している。

レオンの鋭い瞳には感情の欠片もなく、ただ「効率」と「利益」という冷徹な論理だけが渦巻いていた。
レオン
このプロジェクトに投じられた予算と時間、そして我が社のリソース。
それら全てを、君はこの紙切れ一枚のミスで泥に塗した。
レオン
……アーサー、この男の解雇通知書を今すぐ用意しろ。
アーサー
承知いたしました、CEO。
傍らに立つアーサーが、シルバーフレームの眼鏡を押し上げながら無機質な声で応じる。
社員X
待ってください、レオン様! 
次こそは必ず…!
泣きつく役員の言葉を、レオンは一瞥だにせず遮った。
レオン
二度と俺の前でその無能な口を開くな。失せろ。
地を這うような低い声。それはまさに、逆らう者を一瞬で噛み殺す「漆黒の魔王」そのものだった。

震えながら退出する役員たちを見送ることさえせず、レオンは時計を見た。
18時30分。

その瞬間、彼の瞳に宿っていた絶対零度の光が、微かに揺らいだ。

脳裏をよぎるのは、今朝、玄関で見送ってくれた愛妻の姿。
レオン
(…あこな。あいつは今、何を想っている。…掃除機以下の価値しかないと、俺がこの手でガラスを拾わせた、あの時の俺をまだ憎んでいるのか? それとも……)
過去の自分の愚かさが、胸の奥をキリキリと締め付ける。

だが、今の彼を突き動かすのは、その後悔さえも塗り潰すほどの、狂おしいまでの執着だった。
レオン
アーサー、車を出せ。あとの仕事は全て明日に回す。
一秒でも早く、あいつをこの腕に閉じ込めなければ、俺の理性が保たん。
アーサー
まだ重要な案件が三件残っておりますが。
……まあ、おっしゃっても無駄でしょうね。胃薬の在庫はまだあります、どうぞお急ぎください。
アーサーの呆れた溜息を背に、レオンはコートをひったくるように手に取ると、風を切り、獲物を追う獣のような足取りでCEO室を後にした。
レオン
……あこな。今すぐ、お前の香りでこの喉の渇きを潤してくれ。……他の誰の視線も、お前には触れさせない。お前を愛しているのは、世界で俺一人だけでいいっ!!
重厚なリムジンの後部座席で、ネクタイを乱暴に緩めながら、獲物を狙う獣のように独占欲を含んだ。

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