流星side
少しだけ日が傾いているなか、帰路を早めに歩く。大橋くんにお昼をご馳走になって、最近の事を聞かれた。大橋くんは優しく聞いてくれたのに俺が怒鳴ってしまって、少しだけ気まずくなってしまった。みんな心配してくれてるのはわかってるしこんなにも手を差し伸べてくれているから、思わず大橋くんが台所に立った時に口に出してしまった。
たすけて
って。
口に出した後にまずいって思ったけど、シンクに流れる水の音で聞こえてなかったらしくて、ちょっと一安心。言った方が絶対楽になるって分かってるのに、心はどうも言うことに恐怖を覚えているらしい。
言いたい、でも言いたくない。2つの感情が振り子のように揺れ動いていた。
心はとぼとぼ歩きたい気分やけど、早く帰らなまた追いかけられるかもしれんから、ほぼランニングくらいの速さで歩いていたら
『流星くん!♡』
あの女の声が聞こえて後ろを振り返った。
流星「ッ!…あれ、」
でも、そこには誰もいなかった。
『ずーっと大好きだよ♡』
流星「もう…なんなん…。」
いないはずなのに、ずっと聞こえるあの声。もしかしたら見えないところから話しかけてるのかも。そう思ったけど、耳元で聞こえるし、走ってもそれは変わらない。俺が作り出しているものだってわかっているのに、それは家に帰るまで、いや、家に帰ってもずっと俺の耳元で聞こえ続けた。
『なんで返事してくれないの?』
『流星くんは私のものでしょ?』
『こんなに愛してるのに…!』
『早くこっち見てよ!』
流星「っうるさいうるさいうるさい!!!!」
布団を被っても、耳をふさいでも、ずっと聞こえてくるその声に頭がおかしくなりそうだった。
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少しお知らせがありまして。実は主この期に及んでまさかの体調を崩しております。幼稚園からずっと皆勤賞だったのになぁ、なんて内心ガッカリしていますが。なので完全に回復するまでは更新が出来なくなる…かもしれません。ご了承ください。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。