前の話
一覧へ
次の話

第1話

夜更けの作業通話
63
2026/01/13 13:11 更新
深夜1時。
通話に入ってきた甲斐田の声は、いつもより少し低い。
甲斐田晴
甲斐田晴
……まだ起きてたんすか、不破さん
不破湊
不破湊
んー? 甲斐田が作業してるって聞いたら、そりゃ来るでしょ
軽い調子の不破の声に、甲斐田は苦笑する。
本当は締切前で余裕がない。でも——通話が繋がった瞬間、肩の力が抜けた。
不破湊
不破湊
無理してない?
甲斐田晴
甲斐田晴
してないっすよ。……多分
その“多分”に、不破はすぐ気づく。
不破湊
不破湊
嘘つくの下手だよね、甲斐田
図星を突かれて黙る甲斐田に、不破は笑わず、少しだけ声を落とした。
不破湊
不破湊
さ、俺がいる間だけでも休憩。
甲斐田が倒れたら、俺が一番困るんだけど
甲斐田晴
甲斐田晴
……そういう言い方、ずるいんですよ
小さく呟くと、不破が「なに?」と聞き返す。
甲斐田は一瞬迷ってから、素直に言った。
甲斐田晴
甲斐田晴
不破さんがいると、頑張れるから
通話の向こうで、不破が一拍置いてから照れたように笑う。
不破湊
不破湊
……それ、俺のセリフだと思ってた
沈黙。でも気まずくない。
画面越しじゃないのに、互いの存在がすぐそばにある気がした。
不破湊
不破湊
終わったらさ
不破が言う。
不破湊
不破湊
また一緒にゲームしよ。ご褒美ね
甲斐田晴
甲斐田晴
……約束ですよ
不破湊
不破湊
うん、約束
その一言だけで、夜は少しだけ優しくなった。

プリ小説オーディオドラマ