…暗闇で、俺を呼ぶ声が聞こえる。
?「………さん!……ベイカーさん!!お願いですから、目を覚まして下さい!!!」
俺はブショーの声に手を伸ばす。
ブショーの大きくてゴツゴツした温かい両手が、冷えきった俺の手を包んでくれた。
聖騎士の手を振りほどこうとしたが、上手く手に力が入らない。
「良くねーよ」と言おうとしたが、
聖騎士はボロボロと涙を流して俺を抱き締める。
聖騎士はブショーだった。
あまりにも雰囲気の違うので目ではわからなかったが、共に野宿をし、傷付いた背中を拭きあった仲だ。
戦友を間違えるはずがない。
あ、コイツは例外みたいだ。
話を聞くと、俺を刺したのはバンディットで、自分と同じように同職の俺が逮捕され職を失うのが見ていられなかったから、ブショーをモンスターの毒を塗ったナイフで刺したとの事。
(名前は俺のステータスカードを見たらしい)
ブショーは慌てて離れると、
本名をシセル・ブヨルム卿であり、
本職はパラディン(聖騎士)であること。
王からの”重大なクエスト”を受ける為に今朝地元に帰ってきた事。
を話してくれた。
ブショー…シセルは腹を鳴かせた事を恥じらった。
少し歩いたところでシセルが貴族であると確信し、今までの無礼な行動がバレないよう”グレンだと気づかれてはいけない”と心に誓った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!