小平太や文次郎、仙蔵の声が後ろから響く。
心臓が飛び跳ねるのを感じながら、角を曲がって必死に走る。
僕は柱の陰に身を潜め、そっと息を整えた。
静まり返った廊下。聞こえるのは自分の荒い呼吸と鼓動だけ。
胸に巻いたサラシを押さえながら、僕は小さく笑う。
しかし安心したのも束の間____________
背後から落ち着いた声。肩がビクッと震える。
振り返れば、柱の影に仙蔵が腕を組んで立っていた。
その表情は、怒っているというよりも……面白がっているようにすら見える。
ほんの一瞬、足が止まりかけた。けれど___僕は唇を噛んで即座に懐に手を伸ばす。
ぱんっ――!!
白煙が一気に広がり、視界を覆い尽くす。
忍具袋から取り出した煙玉を地面に叩きつけ、僕は迷わず反対方向へと走り出した。
音と煙に釣られて、別の廊下にいた他のみんなも駆けつけてくる。
煙が晴れかけたところで、仙蔵が腕を組んだまま、ふっと笑った。
仙蔵は目を細めて煙の向こうをじっと見据える。
煙玉で仙蔵の視線を切った瞬間、僕は息を切らしながら校庭を駆け抜けた。
息を整えつつ、校庭を見渡すと、遠くに大きな木が目に入った。
木の陰に向かってそっと駆け出す。
まだ心臓はドキドキしていて、足音が風に揺れる葉の音にかき消される。
そっと木の幹に手をかけ、慎重に登り始める。
足場を確かめながら一歩一歩、呼吸を整えて進む。
心臓はまだドキドキしているけれど、少しワクワクする気持ちも混ざる。
木の上で一息ついた僕は、ふと暑さを感じる
軽く手で忍服の首元や袖を直し、少しだけ緩めると、谷間に汗が溜まっていることに気づく。
汗を拭こうと、少しサラシを緩めたその瞬間........
下から低く落ち着いた声が聞こえ、僕はびくっと肩を震わせる。
慌てて手でサラシを押さえ、元に戻そうとするが、まだ完全には整っていない。
そのとき、強い風が吹き、枝が大きく揺れる。
体勢を崩し、僕は「うわっ!!」と小さく叫びながらバランスを失う。
次の瞬間、仙蔵の腕がすっと伸び、僕をしっかりと抱き上げた。
仙蔵の落ち着いた声に、僕は小さく頷く。
お姫様抱っこで受け止められて、胸の高鳴りと焦りで顔が真っ赤になる... ふと視線を下に落とすと..











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!