第12話

本来のお話
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2026/01/29 09:00 更新
『ねえ』


「なに?」

その純粋な瞳に僕は負けてしまった

『今日一緒に来てた子と付き合ってるの?』

そう言うと、ボッと顔が燃えそうなくらい赤くなっている君がいた

「実は、婚約したんだ」

僕のいちばんは君だけど、君のいちばんは僕じゃなくなっちゃった

寂しいけど、君の愛するものを僕も愛するのが僕なりの愛し方だから
『おめでとう!結婚式呼んでよ』

「いいの?」

『もちろん!君のためなら絶対いくよ』
これが精一杯の僕の愛

今でも大好き。愛してる。僕の初恋くん

『ねえ』

これは、僕からであり、俺からでもある

「なに?」

『大好きだよ。愛してた』

でも、もうそれが叶わないのなら最後くらい
愛を伝えさせてよ
「アイドルになったね。僕も大好きでした」

『うん』

「じゃあ行くね」

『またね』

「うんバイバイ」


あぁ、大好きだな

君を思っていた一分一秒が愛おしかったよ

来世は他人か、一般人同士がいいな

普通に君と恋に落ちて、僕と結婚する

そんな未来を歩きたい

君は前、来世もアイドルがいい?って聞いたね

答えが出たよ

だから聞きに来てよ

『ちょっと待って』

『来世は、アイドルやだ』

『幸せになりたい』

「そっか、今からでも幸せになってね」

振り返った君は笑顔に少し涙を混ぜた表情をしてその場を去っていった

僕はもう泣かなかった。慰めてくれる人はいないから
縮まることのないこの距離が、アイドルとファンというこの関係が何よりも辛かった
そんな片思いも今日でおしまい
バイバイ最愛の君

次会うときは君の晴れ姿を見せてよ

僕のためだったら良かったのにな

そこからの日々は世界が曇ったようだった

人の顔を覚えるのも難しく、体力も劇的に低下した

何をするにもやる気が起きず、ほぼ寝たきり

医者に診てもらうと鬱と何らかの病気らしい

精神科送りにされた

そのあと風邪をひいて薬を自分から買いに行った

死ぬかと思った

そしたら、君の結婚式の招待所が来ていた

君の相手の字で下に来て欲しくないと書いてあった

意地悪なので行くことにした

メイクもして、ヘアセットも頼んで、スーツを着た
全部君のため
そして、そこで見た君の笑顔は美しかった

「来てくれたの?!」

『もちろん!』

『ご結婚おめでとう幸せになってね』

「ありがとう君もね」
そうして家に帰った

そこからの記憶はない

泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて

ようやく

処方された眠剤と瓶の風邪薬を飲んで

眠りについた
そしたら、ようやくこの恋の魔法が解けた

幸せになるね

ありがとう

来世でまた会おう

君のパートナーがいない世界でね
大好き

愛してるよ
アイドルの君へは、=LOVEさんより絶対アイドルやめないでの曲パロディーです。
このふたりは、何があっても結ばれることはないだろうなと思っていました。だって、ファンの子が好きになった彼は、アイドルをしていたから彼だから。反対にアイドルの子が恋したのもアイドルのために身を削ってまで会いに来る健気で一途な彼だから
お互いを利用して、決して対等な関係にならなかった彼ら。今までお金を使って会いに行っていたのはファンの方ですが、最後はアイドル側がファンのために髪とかメイクとか服とかをちゃんとショップでしてもらってから結婚式に出席したというのもポイントです

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