[りょう視点]
あなたが毎日仕事終わりにカラオケに行ってるらしい。
一言「ウケる」と添えられて送られてきた写真はズラッと俺らリサイタルズが並ぶ履歴だった。
そうだった、見えないところで頑張るんだよなぁ。
見せてくれたってことは、俺ら仲良くなったってことかな。
あなた「としみつには練習たくさんしてたって言わないでよ!」
俺は特別なんだって思った。
なんて、性格悪いかな。
時々仕事前にカラオケに行った時には帰りの車でビデオ通話だけ繋いで走りながら聞いたけど、やっぱりうまい。
90点以上は確実って言葉も嘘じゃなかった。
時々俺が突っ込むと笑って85点とかになったりもしたけど、いつも90点以上だった。
りょう「なんでそんなに上手く歌えるの?」
あなた「この歌は上手くないよ、カラオケで点数取るための歌。」
りょう「どういうこと?」
あなた「いまからうまい歌歌うから聞いてて。」
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りょう「本当だ、うまい。」
あなた「でもこれ点数87点なの。」
りょう「え?なんで?」
あなた「アレンジとかするとどうしても音が半音ずれたりとか、自分の歌い方だとやっぱり少しだけ点数下がっちゃうんだよね。」
りょう「すご!そうなんだ!」
あなた「…としみつ、プライド高いから点数よりも上手く聞こえる歌い方を取ると思うんだよね。」
りょう「うん?」
あなた「悔しい、あんだけキラキラした舞台にたってる友達だもん、カラオケでくらい勝ちたい。」
あ、また、弱いところを見せてくれた。
少しだけにやけるのを抑えた。
俺は多分、ずるい。
こんなに弱いところを見たがってるのに
自分の本心はまだ隠したがってる。
素直にこういうこと言ってくれるの嬉しいって
まだ言えない。
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あなた「りょう!練習たくさんしたってとしみつにいった?」
りょう「え?言ってないよ?」
あなた「めちゃめちゃ練習したでしょ?って言われた!」
りょう「そりゃあんだけ振り付け完璧だったら言われるやん。笑」
あなた「…負けたし練習したのバレるしもう…。」
りょう「YouTubeのアカウントあるなら90以上取ってる動画載せればいいやん。笑」
あなた「やだ…。負け惜しみだと思われる。」
俺にしか弱いところを見せないツンデレな彼女は今日も可愛かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。