ジフンのペントハウスで迎えた夜。
あなたは彼の隣で静かに眠っていた。
彼女の寝息を聞きながら、ジフンはベッドサイドで煙草を吸っていた。
闇に溶けるような視線の先には、スマホに届いた暗号化された通知。
《RED LEASE:接触再試行の兆候あり》
「……まだ諦めてねぇのか。」
小さく呟き、火のついた煙草を灰皿に押し付けて消す。
あなたには話していない。
あの“組織”が彼女に関心を持っているということを。
理由は、彼女の“存在”そのもの――世界に知られる名と、圧倒的な影響力。
今、彼女はただの「愛する人」ではない。
組織にとっては、ジフンの「急所」だった。
ジフンは、スマホに短く指示を打つ。
「ASAHI。あなたの警護を増やせ。気づかれないように。」
翌朝。
あなたが目を覚ますと、隣にいたはずのジフンはすでに姿を消していた。
ベッドサイドには、手書きのメモが残されている。
「しばらく仕事が立て込む。必ず戻る。Stay safe.」
あなたはその字を見つめ、そっと指でなぞった。
“必ず戻る”
その言葉に、嘘は感じなかった。
でも、それ以上に、彼がどれだけ危うい世界にいるのかを思い知らされる。
彼女の心に、小さな不安が芽を出していた。
一方、ジフンはソウル郊外の旧施設に姿を現していた。
アサヒとジュンギュが待機していた。
「“RED LEASE”の動きが一段と速くなってる。あなたに情報が漏れたらまずい。」
「いや、もう漏れてるかもしれない。SNSに“彼女とあんたの関係”をほのめかす投稿が上がった。」
ジフンの顔から血の気が引く。
「誰だ。」
アサヒがタブレットを差し出す。
そこには、あなたがニューヨークでジョンウといた現場を遠くから撮られた写真。
その下に、薄く打たれた言葉。
「本当に“彼”とだけ?」
ジフンの拳が音を立てて机を叩く。
「……狙いは情報じゃない。“疑い”を植える気だ。」
ジュンギュが息を呑む。
「どうする?」
「今すぐその投稿を消せ。元のアカウントは特定しろ。あなたには……」
ジフンは言いかけて、やめた。
彼女の顔を思い浮かべる。昨夜、彼女が囁いた言葉――
「私、あなたのことが……怖い。でも、同じくらい惹かれてる。」
「……俺のせいで、あいつを巻き込むわけにはいかない。」
その目に、鋭い決意が宿る。
「この手で片付ける。“RED LEASE”は俺が終わらせる。」
その頃。
あなたはスタジオの控え室で、偶然スタッフの会話を耳にした。
「見た? あの噂の投稿。ルナって、あのボスと本当に……?」
「やばいよね、彼って殺しも関係してるとか……」
「嘘でしょ……?」
全身に冷たい血が走るような感覚。
彼女は震える指でスマホを取り出し、その噂の投稿を見つけた。
――そこには、ジフンとの写真と、ジョンウの影。
“本当に、彼だけを見ている?”
あなたの中で、何かが崩れかけた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!