久々知くんに連れられて、いろいろな店に行ったし、思っていたものは全部買えた。
集合場所にほくほくで戻ると、もうハチくんが来ていて、手を振ってくれた。
荷物は久々知くんが持ってくれているので、ハチくんに駆け寄る。
『お疲れさま!わ、それなに?買ったの?』
ハチくんも風呂敷を抱えていて、頷いた。
「買ったって言うか…買ってもらった。新しい小袖」
『え!誰に?』
「知らない人」
『す、すごい』
モテるんだ。
「兵助、あなたさんと一緒だったんだな」
「うん。俺が頼んだのだ」
『助かったよほんと』
新しい店がどうだ、どこの和菓子が美味しかっただ、そういう話をしていたら、勘右衛門くんと鉢屋くん、不破くんが帰ってきた。
「兵助ー。デートしてたでしょ」
「私も見たぞ」
「僕も」
いつ見られてたんだ?気付かなかった。
そう思った瞬間、頭の中に立花くんの「お前に気付かれたら忍たまの名が泣くわ!」と言っていた顔が思い浮かんだ。いつも立花くんが出てくるな。
『買い物に付いてきてくれて』
「自然にぶらぶらするのにちょうど良かったのだ」
「俺はひとり寂しくぶらぶらしてたって言うのにさ…」
ひどいよ兵助、と勘右衛門くんが久々知くんと肩を組む。
「あはは。みんな揃った事だし、帰ろうか」
不破くんが笑ってそう言った。行商人だった格好はもう既に私服に変わっている。さっきまでは違ったのに。忍者って早着替えもすごいんだ。
「その荷物、ここに置いていいですよ」
不破くんが、木でできたリュックの枠組み?みたいな…昔話でよく薪とかを積んでいるあれだ。その上を指さした。
『いいの?』
「うん。兵助も」
『あ、持たせたままだった…ごめんね、ありがとう』
「全然軽いよ」
「背負うほうが楽だと思うから。ほら、乗っけて」
お言葉に甘えて、乗せさせてもらう。
雷蔵ってホントに優しいな、と三郎くんが言っている。
『ありがとう!』
「どういたしまして」
実を言うと、久々知くんと手を繋いで、片手で荷物を持っていたから、結構疲れていた。ふたつも風呂敷包みを作ってしまった自分が悪いんだけどね。
「じゃ、帰ろうか」
『はーい』
来る時に通った山道をまた歩く。しばらくするとハチくんもいつの間にか私服に戻って、化粧も落としていた。
『五年生はこういう実習、多いの?』
「まあ、そうですね。今日はターゲットの情報集めでしたけど…実際にターゲットと同じ店に入って諜報したり、接触したりすることもありますよ。今日俺は穴丑のところへ言って、話を聞いてきたんですけど」
『あなうし?』
「えっと…普段、一般人として生活して情報収集したりしてる忍者のことです」
ハチくんが教えてくれる。
『へえ…みんなすごいね』
「まあ…」
『とにかく、一緒に来させてくれて、助かったよ。ひとりだと道も分からなかったし』
「まあ山賊とかに襲われても大変ですしね」
『さ、山賊…!?』
勘右衛門くんが頷いた。
「いますよ、山賊。海には海賊もいますし」
『そうなんだ…』
「ちょっと前に山賊捕まえたよな」
「あったね、そんなこと」
『すごい』
平成や令和では考えられなかったことだな、と思ったけれど、日本以外の国ではまだあるか、と思い直す。
「……あれ、足、大丈夫ですか?」
不意に不破くんが俺の足先をみた。
『え?あ、うん…大丈夫』
正直いうと山道のでこぼこ道が始まったあたりからちょっと痛い。
「そっか。慣れてないから。おんぶしましょうか」
ハチくんが何気なくそう言った。
『え!!だ、大丈夫だよ』
「じゃあ俺がしようか?」
勘右衛門くんが自分を指さしながらそう言う。その後ろで久々知くんも自分を指さしていた。
「俺がガタイ的には一番かなと思うんだけど…」
確かにハチくんの言う通りかもしれない。久々知くんにおんぶしてもらうのは余計に気が引ける。
『俺、君らより年上なんだよ』
「そんな変わらないでしょ」
『いや…もうすぐ二十』
え!!!!と全員が声を出した。
「同い年くらいだと思ってた」
「俺は小松田さんと同じくらいかと」
「俺は利吉さんくらいかと…」
『小松田さんって何歳なの?』
「十六…?とか」
『若いよ…』
***
結局、帰り道は「帰るの遅くなったら困るんで!!」という鉢屋くんのひと言に負けて、ハチくんにおんぶしてもらった。逞しい背中だった。
入門表を!!と現れた小松田さんが、ぱちくりと俺を見る。
「どうしたんですかぁ?」
『ちょっと…足が痛くて』
「ふうん…あ、書いてください」
ハチくんに降ろしてもらって、名前を書く。
「報告して、はやく食堂に行こう」
鉢屋くんが欠伸をしてそう言った。
『あ、夜、お風呂上がりに長屋に寄ってもいい?』
「…いいけど…」
「何か用事でも?」
『用事って程じゃないんだけど…お菓子買ってきたから、一緒にどうかなと思って…』
「あ。あれ俺たちの分もあったの」
久々知くんが少し驚いたようだ。鉢屋くんも伸びをした姿勢のまま、俺を見ている。
「一緒に町に出たって言うのに、わざわざ俺たちの分も買ったのか?」
『授業だから、みんなで一緒に食べれなかったなって思って…』
「ふーん…まあ、確かに」
町で揃って食べることなんか、最近はないかも。
鉢屋くんがそう呟いた。
「あなたさん。医務室に行きましょう」
『あ、うん!』
「さ、乗ってください」
『も、もう歩けるよ』
「いいから。善法寺先輩に怒られる」
『はい』












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!