第35話

本陣の視察
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2026/04/19 09:02 更新
『あっ』



あなたの天女みょうじさんに遭遇した。周りに六年生がいる。ここにきて最初に睨まれた時のような視線をいただいた。

えっ、七松小平太、怖…。

てかなんでそんな目で見られないといけないんだよ。


『こ、こんにちは…』

「……。ちょっとみんなぁ…あなたの天女なまえ、この人と少し話があるから。離れててぇ?」

「あなたの天女なまえさん、大丈夫?」

「あなたになにかされるかも分からんぞ」


善法寺くんと立花くんが俺を見てそう言う。なるほど、俺が危害を加えるかもしれないと思われてるのか…。


「見えるところに居てくれたらいいから」


あなたの天女みょうじさんが言いながら、手振りで六年生を下がらせた。え、すご。


『えっと…』

「あんた、どこから来たの?」

『ん?』


かなり話し方が変わった。雲行きが怪しいぞ。


「現代から来たんでしょ?邪魔になりそうだから、ここから出て行って欲しいんだけど?」

『お、あ、な、なん、え!?』

「キャラにいなかったもん、あんたみたいな事務員なんて」

『キャラ?』

「…知らないでここに来たの?」

『来たっていうか…自分の意思ではないんだけど…みんな知ってるところなの?』

「忍たま乱太郎!原作は落第忍者乱太郎よ!知らないの?アニメ、小さい時に観なかった!?」


落第忍者って酷くない??


『アニメ?』

「乱太郎、きり丸、しんベヱ!!」


三人の名前を言われて、その顔が並んで思い浮かぶ。


『………………あっ』


見たことあるかも…。


「気がついた?ほんと鈍感ね」

『はい…うち、そういうのあんまり観ない家だったんで…』


小さい頃、うちでは母親がハマっていた吹き替え韓ドラが流れていた。
成長してからは習い事や部活に行ってたからテレビ放送は観られなかったし、他のいろんなアニメの録画とかを観ていた。

気が付かなかった。

滝夜叉丸くんの名前がえらく覚えやすいと最初に思ったのは、もしかしたら何回か観た時に、聞いたことがあったからかもしれない。


「ここまで知らないと、影響ないのかも知れないけど…。私、不安要素は排除しておきたいから。心配性なのよね」

『えっと、つまり?』

「最初に言ったじゃない。出ていって」


ぎぇーーーーー。

この人、めっちゃ怖いかも。何言ってるのか全然分からない。


『困ります、行くところないのに…』

「男なんだからどうにでもなるでしょ。町で働けば?」

『ひ、ひどくない…?』


ちょっと離れたところにいる六年生に視線で少し助けを求める。食満くんがそれに気が付いて、なんだか変な顔をした。それどんな気持ちなん?


「事務室で働いてるくらい、いいんじゃないか?」

「小松田さんの失敗も減ってきてるらしいし」


食満くんと潮江くんがそう言ってくれた。あの変な顔は「それはおかしくね?」っていう顔だったのか。ありがとう…。


『事務室の仕事、俺も頑張れるようになってきて、好きだし…』

「だから、なんであなたの天女なまえの言う通りにしないの?全部、あなたの天女なまえの言うこと、きくでしょ!!あなたのみょうじあなた!!」


手をパッと掴まれた。


『き、きかないです!!!』


目をつぶって少し声を上げると、あなたの天女みょうじさんの言葉が止まった。手が離される。

そろ、と目を開いてちらっと見てみた。


うわーーーーーー。めっちゃ睨まれとるぅ。


「知らないから…」

『ええ…?』

「絶対追い出してやる」


怖ーーーーーーーっ!



***



仕事があるから!と尻尾を巻いて逃げ出してきた。


「あなたです…」

「はーい!」


小松田さんが元気に返事をしてくれて、吉野先生が「どうでした?」と振り返ってきた。


『どうっていうか…学園長先生から接触OKが出たんですけど…あなたの天女みょうじさんに面と向かって「出ていって」って言われちゃいました』

「おお…」

「それはまた、どうして」

『なんか…あなたの天女みょうじさんが望んでいる学園に俺が不要っていうか、邪魔っていうか…俺がいないのが普通らしいんですけど』

「うーん?どういう意味ですかぁ?」

「あなたくんが危ないってことですよ」


え!


『俺、危ないんですか!?』

「忍たまたちが天女側についてますからね…なにか悪いことを吹き込まれたら、どう出るか分かりませんよ」

『た、たしかに…!』


一番に七松小平太の顔が浮かんだ。


『四年生に先に接触しなくては…』


俺は言いながら、自然と小松田さんを見ていた。本人は首を傾げている。


『頼みましたよ』

「?」


***


「入門表にサインしてくださーい!」

『お、おかえりー!!』


いち早く察知した小松田さんについて走って、門までたどり着いた。息が切れる。小松田さん、素早い。


「そんなに私たちが戻ってくるのが待ち遠しかったですか?」


滝夜叉丸くんをはじめ、四年生みんなが不思議そうな顔をして順に入門表に名前を書いていく。

その間に、俺は今学園がどんな状況にあるのかを説明した。


『かくかくしかじかで…』

「「「「えーーー!?」」」」

「おやまあ…」


みんな分かってくれた。便利だなこのシステム。


『だから、あなたの天女みょうじさんにはあんまり近付かない方がいいと思うんだ』

「ええ、元々そのつもりでしたから」

「上級生、みんな全員やられちゃったんですか?」

『うーん…今のところ、単独行動してるって人は見かけてないけど…』

「じゃあ、全員かもしれないんですね…」


滝夜叉丸くんと三木ヱ門くんが腕を組んで難しそうな顔をして黙り込む。守一郎くんがその横で「食満先輩…」と呟いていた。


『あと、あなたの天女みょうじさん、俺にここから出ていって欲しいらしいんだよね』

「「「「「え!!?」」」」」

『なんか、生活するのに邪魔らしくて…』

「横暴です!」

「先にいたのはあなたさんなのに!」

「先輩たちは何も言わないんですか!?」

『うーん…食満くんと潮江くんはなんか微妙そうな顔してちょっと庇ってくれたけど…。七松小平太はわかんない』

「それは…怖いですね…」


滝夜叉丸くんが呟いた。「とりあえず長屋に行きましょう」と三木ヱ門くんが言ったのを皮切りに、みんなで歩き出す。


『そういえば、みんなお疲れ様』

「ありがとうございます。早く風呂に入りたいです」

「本当に」

「眠たい〜」

「お腹空いた…」

『ほ、ほんとお疲れ様ね…』


いつものキラキラ四年生とは言えない今の彼らを見るに、相当疲れる実習だったみたいだ。


「とりあえず風呂行きましょう!」

「そうだね守一郎…さっぱりしよう」

「喜八郎、タオルを忘れるなよ」

「はーい」

「あなたくんもいこー?トリートメントしてあげる」

『嬉しい!』


お風呂って、あなたの天女みょうじさんは来れないから安全地帯だな、なんて思った。

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