第105話

第四章『愛情のメス。支配のメス。』その後
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2026/01/29 11:00 更新
何週間か経った後、モノビトから小清水の死が伝えられた。

彼女は、餓死ではなくて、心臓発作が起こり、亡くなったらしい。

でも……………

小清水が最後に放った言葉を、まだ覚えている。

俺が正直者だったから、長宗我部は俺に真実を伝えなかった。

正直者は、正直だから………

誰かが苦しんでいる事を話してしまう。

これから、長宗我部は、この事を俺に話すのをためらった、ということか。

そういう事は、俺は誰かに話したくもないんだけど………

そうだそうだ、ずっと長宗我部は俺に…………

正直だね、と言っていたな。

これだから、俺は長宗我部の異変に気が付くことが出来ず、

ついには小清水に自殺を手伝ってもらい………

俺には難しかったんだな。

長宗我部、気付いてあげることができなくて、本当に申し訳ない。

俺が目の前にある喜びに、とらわれていたせいで………
新井零次
新井零次
………急に死なれても、どうしたらいいのか…………
俺はゆっくりとため息をついた。

これから、どうすればいいのか、分からなくなった。
新井零次
新井零次
やっぱり、俺は………長宗我部と釣り合わなかったのかもしれない。
長宗我部は、きっと無理して………

俺と一緒にこの学園生活を送っていたみたいで…………

なんだか、俺は長宗我部ではないのに、辛くなった。

でも、本当につらいのは、今ここにいる俺なんかじゃない。

ずっと俺と、離れたいと思っていたのかもしれない、長宗我部なんだ。
千歳アメリア
千歳アメリア
あら、零次君じゃない。
千歳アメリア
千歳アメリア
個室のドア、開けっ放しにしたままよ?
新井零次
新井零次
あ、気付いてくれてありがとう。
俺はドアを閉めようとした。
千歳アメリア
千歳アメリア
ちょっと待って、零次君。貴方に話したい事があるわ。
千歳の顔が真剣に変化していた。

何か大切な話があるのか………?
千歳アメリア
千歳アメリア
零次君、貴方に言い忘れた事があったの。聞いてくれないかしら。
新井零次
新井零次
あぁ、もちろん。手短に頼む。
千歳アメリア
千歳アメリア
それは………長宗我部さんの事よ。
長宗我部………?

どうして今頃長宗我部について話すんだ?
千歳アメリア
千歳アメリア
この裁判が終わった後、すぐに零次君に話したかったけど………
ちょっと難しかったわ。
千歳アメリア
千歳アメリア
長宗我部さんは、貴方の事を大切な人とは思っていなかったみたい。
千歳アメリア
千歳アメリア
とても残念に思えるかもしれないわ………
千歳アメリア
千歳アメリア
しかし、本当の事を伝えなくちゃ………
新井零次
新井零次
…………………………………
やっぱり、俺の思っていた通りだったそうだ。

きっと、小清水もコレを言おうとしていたのかもしれないな。
千歳アメリア
千歳アメリア
長宗我部さんは、零次君に合わせるために、無理していたみたいよ。
千歳アメリア
千歳アメリア
だから………彼はあの感染症にかかって…………
千歳アメリア
千歳アメリア
きっと、はっきりと決心できたのかもしれないわね。
新井零次
新井零次
そういう事だったんだな。
新井零次
新井零次
ありがとう、千歳。
俺は優しくドアを閉めた。

千歳は、目を伏せて、口を尖らせていた。
新井零次
新井零次
………この事件が、長宗我部の本質?だったんだな。
新井零次
新井零次
あの感染症にかかっているうちに、俺に本音を話せばよかったのにな。
でも………

本音は、人の深淵を現す物ではないのだろうか。

実は、本音というのは”人のウワベ”の事を現すのではないのだろうか。

本当に思っている事は、本音とは言えない。

そういう事か。

分かった。
本音は、その人のウワベにしか現れないものだ。

心の奥にある、本当の訴えという物は、本音とは言えないのだ。
第四章『愛情のメス。支配のメス。』 完

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