また、……あんなに……笑ってる。
………僕以外の人の、………前で。
ユンギ兄さんは、スタッフの人達と
仲良く、楽しげに、……話をしている。
ちらりと盗み見した、右側の景色に
何だか、僕の胸が……ちくりと、痛む。
見て、傷付くくらいなら……
見なきゃいいんだ……けど………。
でも、………あの笑顔を………
僕以外の誰にも、独り占めなんて
されたく、………ないから。
僕は、誰にも気付かれないように
どうしようもない、感情を抱えながら……
横目で、大好きな人の、笑顔を……見ていた。
前から、「塩対応」……なんて言われたり
ちょっとだけ無気力なとこがあったり
おじいちゃん呼ばわりされてたり
どこかずっと、一線を引いているような……
近寄りがたい、印象がある人だと
出会った頃は、そう、思っていた。
でも、大人になって、成長して
色々な人達と関わったり、仕事をしたり
色々な経験をして、自分を築き上げてきた
最近の、ユンギ兄さんは……
とにかく、良く……笑うようになった。
初対面の人にも、ファンの人たちにも
穏やかに、にこやかに、笑顔を見せて……
誰とでも、すぐに打ち解けて、寄り添って
あの綺麗に並んだ、白い歯を見せて
こっちも幸せになるような……
最高の笑顔を、見せてくれる。
ユンギ兄さんの笑った顔は……
………本当に、………可愛いんだ。
瞳が、きゅっと細くなって。
大きく口を開けて。
腹の底から声を出して、楽しそうに
まるで子供みたいに、輝くように、笑う。
僕をからかうような時に出す
乾いた笑い声も、大好きなんだけど……
ユンギ兄さんが、心から楽しそうに
嬉しそうに大きく吐き出す、あの笑い声は
僕は、もっと………大好き……で。
でも、………それが………僕ではない
他の人に向けられてると……
なんだか、少しだけ………
悔しくて、……苦しい、気持ちに、なる。
あの笑顔を、僕だけが……
独り占めなんか出来やしないって
……頭では、解ってる、………のに。
ユンギ兄さんの視線が、興味が……
あの、可愛くて大好きな笑顔が
僕以外の誰かに、向けられてるだけで……
どうしようもなく、僕の心の、表面が
ざらざらと、荒く、鋭く……波打つ。
……今すぐ、ユンギ兄さんに……
抱きついて、……引き寄せて………
僕の方だけを……僕の事だけを……
………見て欲しい、………なんて。
叶うはずのないような事を、考えてしまう。
ダメだよね、……こんな……
独りよがりで、自分勝手な事を
考えたり、しちゃ……さ。
いくら、……好きだからって。
恋人同士、だからって……
ユンギ兄さんの、全てを……
………手に入れる事なんて……
不可能、なんだから………さ。
………心の中が、モヤモヤする。
口の中が乾くように、熱くなってきて……
僕は、無意識に、………舌で唇を潤す。
………キス、………したい、………な。
ユンギ兄さんに、……触れたい。
あの柔らかい髪に指を通して……
そこから薫る、あの香水の匂いに……
包まれて………安心、したい。
……まだ、仕事中なんだから。
こんな事、考えたりしちゃ……
………………ダメだ。
気持ちを、切り替えなきゃ。
………そう、思いを巡らせながら
黙って視線を下げて座り込んでいた
僕の身体に………陰が、落ちる。
いきなり目の前に現れた
僕の困惑の原因である
ユンギ兄さんの姿に………
僕の身体は、強張って震えた後に……
急に熱を持ち始めて、顔が赤く染まる。
そんな挙動不審な、僕の姿を見て……
察しの良すぎるユンギ兄さんは
僕の目の前にしゃがみこんで……
少しだけ、上目遣いで、首を傾げながら
僕の瞳を、じっと、……見つめる。
………………かわいい。
すごく、かわいい。
今すぐ抱きしめたい。
今すぐに、キスしたい。
ぜんぶ、ぜんぶ………
僕だけのものに、………したい。
僕は、………どうしても、我慢できなくて。
それでも、今は、我慢しなきゃって事は
ちゃんと、頭では、解っていて、
………………でも。
触れたくて、どうしても触れたくて……
ユンギ兄さんの、髪に、そっと、触れて……
指に絡めながら、するりと、髪を梳かした。
………ユンギ兄さんが………
僕の、視線から、表情から、指先から……
僕の感情を、的確に、読み取って……
狼みたいな、鋭い視線で……
僕の、この感情を、………抑え込むように
小さく、でも、とても強く…………囁く。
心臓が、ぎゅっと………縮まるように、痛い。
ユンギ兄さんに、諭されたからじゃない。
この感情を抑え込まれたからじゃ、ない。
ユンギ兄さんも……僕と同じように
この、視線を合わせた、一瞬……だけで。
僕の事を、求めてくれたのが……
ちゃんと、伝わってきたから、………だ。
思わず、可笑しくなって、僕が笑うと
ユンギ兄さんも、表情を緩めて……
柔らかく、優しく、……微笑んでくれる。
さっきまでの嫉妬心や、独占欲が……
サラサラと流れるように、
風に乗って、砂のように消えていく。
ユンギ兄さんが、僕に向けてくれる
この視線と、この優しさと……
この可愛い、大好きな笑顔………だけで。
あんなにもザラザラした感情が、
どっかに、消えて行っちゃうだなんて……
ホントに、単純で、呆れちゃう……けど。
ずっと独り占めしたくなる気持ちも、
いつでも抱きしめてキスしたい思いも……
その思いを抑え込まなきゃいけない、
痛みや、辛さや、もどかしさも……
絶対に、一生、どうやったって……
僕の中からは……消せや、しないんだから。
………………だから………
僕は、甘えるように、いつも願うんだ。
僕は、ユンギ兄さんの髪に触れたまま……
微笑んで、…………そっと、そう、囁く。
ユンギ兄さんは、少しだけ照れたように
僕の視線から顔を逸らした後に……
頬をピンク色に染めながら
綺麗に並んだ白い歯を見せて
可愛くて、輝くような笑顔になった。
そのまま、………その笑顔のままで………
ずっと、僕の、………そばにいてね。
………………僕だけを、………見ていて。
Be Mine.














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。