ここは変だ。明らかに変。
数秒前まではそう思っていたけれど、
今はどちらかといえば私のほうが変だと思う。
地べたに座った制服の挙動不審な女の子は、
ここの人々の目にはどんなふうに映るのかな。
ああ神様、平凡な日々をつまらないと
解釈してすみませんでした。
平凡=平和です。
平和しか勝たん。
帰らせてください、お願いだから。
あーあ、泣きそう、つーん…
頭の上から声がして顔を上げると、
同じくらいの背丈の洗濯籠を持った女の子が
不審そうに警戒した目で私を見ていた。
私の手を無理やり引いて、
人目に付かない草陰に連れて行く。
硬い表情を崩さなかった女の子が、
眉をひそめて心配そうに言う。
心がズタボロな時に、
人の優しさに触れたくなかった。
留め金が外れたように我慢していた
涙が溢れ出して止まらない。
こくりと頷く。
過去に来たのだと改めて認識することは
こんなにも怖いことだったんだな、
女の子は顎に手を当てて考え込み、
しばらくしてまた私の腕を掴んだ。
石畳の道を歩く。
さっきよりは遥かに、心細さが消えていた。
猫猫が手渡してくれたのは、
華やかな紅碧の衣装。
袖を通すと、柔らかい生地が
心を落ち着かせてくれた。
猫猫はなんて不器用に笑うんだろう、可愛い…
くるりと一回転して裾を靡かせると、
鼻を抜けていく爽やかな薬草の匂いがした。
紅碧色だそうです、
あなたの下の名前ちゃんの衣装の色☝🏻
可愛いよね…!()
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!