第3話

↻ 薬の香
565
2023/11/13 08:36

ここは変だ。明らかに変。

数秒前まではそう思っていたけれど、

今はどちらかといえば私のほうが変だと思う。

地べたに座った制服の挙動不審な女の子は、

ここの人々の目にはどんなふうに映るのかな。





ああ神様、平凡な日々をつまらないと

解釈してすみませんでした。

平凡=イコール平和です。

平和しか勝たん。

帰らせてください、お願いだから。

あーあ、泣きそう、つーん…

貴様何者だ
翡翠宮にどうやって入った

あなた
へ…?

頭の上から声がして顔を上げると、

同じくらいの背丈の洗濯籠を持った女の子が

不審そうに警戒した目で私を見ていた。

(う…泣いてる…)
っ、こっち!

私の手を無理やり引いて、

人目に付かない草陰に連れて行く。

その…平気?

硬い表情を崩さなかった女の子が、

眉をひそめて心配そうに言う。

心がズタボロな時に、

人の優しさに触れたくなかった。

留め金が外れたように我慢していた

涙が溢れ出して止まらない。

あなた
うわぁぁぁぁどうしようぅぅ泣

わかった、わかった落ち着いて。

まず、貴方はどうしてここに居るの?
ここは外部の人が簡単に
入れる場所じゃないから

あなた
私、普通に授業受けてただけなの!

授業…?

あなた
こんな感じの時代のことを考えたの、
あなた
遥か昔に戻りたいって、
あなた
そしたらホントに!

遥か昔…?
それじゃあ貴方にとってここは過去?

こくりと頷く。

過去に来たのだと改めて認識することは

こんなにも怖いことだったんだな、

まじか…

女の子は顎に手を当てて考え込み、

しばらくしてまた私の腕を掴んだ。

とりあえず、着替えよう
そんな見たことない様な服だと、
かえって目立ってしまうから

石畳の道を歩く。

さっきよりは遥かに、心細さが消えていた。

そういや貴方の名は?
猫猫
私は猫猫

あなた
私はあなたの下の名前、猫猫ありがとう泣

猫猫
っ//
猫猫
礼なんて要らない
猫猫
私がしたくてしてることだから





猫猫
えっと…ほら、あった

猫猫が手渡してくれたのは、

華やかな紅碧の衣装。

あなた
えこんな可愛いやつ、猫猫が着なよ!

猫猫
私はいいよ
猫猫
貰ったは良いものの、
猫猫
どうにも似合わなくって

猫猫
だからあなたの下の名前が着たら良い
猫猫
きっと似合うから

あなた
ありがとう…!

袖を通すと、柔らかい生地が

心を落ち着かせてくれた。

あなた
着替えたよ、どう、かな

猫猫
…うん、
猫猫
これはあなたの下の名前の為の衣だったんだね

猫猫はなんて不器用に笑うんだろう、可愛い…

くるりと一回転して裾をなびかせると、

鼻を抜けていく爽やかな薬草の匂いがした。



紅碧べにみどり色だそうです、

あなたの下の名前ちゃんの衣装の色☝🏻

可愛いよね…!()

プリ小説オーディオドラマ