夜の街は不自然なほど静かだった 。
人気のない路地を歩く足音が やけに響く 。
心臓が早鐘を打つのを感じながら 、暗闇を睨んだ 。
誰かに見張られているような気配がする 。
その時──
空気がざわつき 、目の前に黒い影が落ちた 。
長い鎌を肩に担いで 、不遜な笑みを浮かべた青年 。
その声を聞いた瞬間 、背筋に冷たいものが走る 。
目の前の男は … おそらく人間ではないだろう 。
ソイツが軽く鎌を振ると 、
月光が反射し 鈍い輝きが走った 。
無意識に一歩後ずさる 。
正直余裕なんてものはない 。
私は残ったちっぽけなプライドで睨み返す 。
けれど 、怯む様子はなく 口角を上げていた 。
そう言ってこちらへ鎌の先を向けてくる 。
誰にもバレてないはずなのに 、
やはり死神 笑 とやらにはお見通しなのだろうか 。
私は頬を伝う冷たい汗を拭って
こちらも地面に落ちている鉄パイプを構えた 。
不思議と力を込めた手は震えずにいる 。
むしろ負ける気はしないほどだった 。
ただ それの何がおかしかったのか 、
ぐちつぼは肩を揺らして大袈裟に笑った 。
そして 考える素振りをして 、
私に提案を投げかけてくる 。
思いにふけるようにして目を伏せる 。
その姿は月光の青い光が反射して 、
どこか憂いを帯びていた 。
紅色の鋭い眼光にじっと見つめられて 、
腕が少し震えた 。
呼吸を整えて 恐怖を隠すように言葉を捻り出す 。
避ける暇もなく 、鎌の刃が首筋に触れる。
冷たい金属の感触に、息が詰まった。
答えなんてわかりきってるくせに 、
意地悪そうに片眉を上げて問いかけてくる 。
歯を食いしばっても変わりゃしない 。
死ぬのは嫌 、けれど目の前の男に従うのも癪だ 。
その返事に機嫌を良くしたのか
ソイツはさっきよりも口角を上げて笑った 。
ぐちつぼは鎌を軽く回し 、
消えるように刃を霧散させる 。
そして 私に手を差し伸べてきた 。
おそらく握手の要求だろう 。
ゾッとする 。
死神と名乗ったぐちつぼ 、
彼からは先程までの殺気は感じられない 。
代わりに 見定めるような嫌な目線が
絡みついてくる感覚に襲われる 。
思惑通りになってしまっていることに苛立ち、
せめてもの腹いせとして差し伸べられた手を跳ね除けた 。
だが ぐちつぼはそれすらも
ケラケラと笑って愉快そうにする 。
こんなやつが相棒だなんて 、
正直不安とストレスで一ヶ月経たずに
死んでしまうのではないだろうか 。
とりあえず命を繋ぎ止められた安堵と
これからのことに対する不安からため息が漏れる 。
──この時 、私はまだ知らなかった 。
これからの一か月が 、
私の人生を大きく変えることになってしまうことを 。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!