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第1話

契約 。
290
2025/10/08 12:18 更新


夜の街は不自然なほど静かだった 。
人気のない路地を歩く足音が やけに響く 。


心臓が早鐘を打つのを感じながら 、暗闇を睨んだ 。


誰かに見張られているような気配がする 。


その時──
空気がざわつき 、目の前に黒い影が落ちた 。

長い鎌を肩に担いで 、不遜な笑みを浮かべた青年 。

gt
よう 、アンタが … 
今回のターゲットってわけか


その声を聞いた瞬間 、背筋に冷たいものが走る 。

目の前の男は … おそらく人間ではないだろう 。

あなた
 … 誰?
gt
俺?死神 、名前はぐちつぼ 。
… まあ覚えなくてもいいけど


ソイツが軽く鎌を振ると 、
月光が反射し 鈍い輝きが走った 。


無意識に一歩後ずさる 。

あなた
 …… 何が目的なわけ?


正直余裕なんてものはない 。

私は残ったちっぽけなプライドで睨み返す 。


けれど 、怯む様子はなく 口角を上げていた 。

gt
いい度胸してんじゃん 、見てわかる通りだよ
俺は罪を犯したヤツを捌くのが仕事なんだ


そう言ってこちらへ鎌の先を向けてくる 。

誰にもバレてないはずなのに 、
やはり死神 とやらにはお見通しなのだろうか 。
あなた
あはは … やっぱり?
でも 、私だって戦えるから 。


私は頬を伝う冷たい汗を拭って
こちらも地面に落ちている鉄パイプを構えた 。

不思議と力を込めた手は震えずにいる 。
むしろ負ける気はしないほどだった 。


ただ それの何がおかしかったのか 、
ぐちつぼは肩を揺らして大袈裟に笑った 。


そして 考える素振りをして 、
私に提案を投げかけてくる 。

gt
オマエ … 試しに 、俺と組まねえか?
あなた
 は??
gt
おもしれぇんだよ 、人間 。
すぐ折れるやつもいりゃ 、妙にしぶといやつもいる 。


思いにふけるようにして目を伏せる 。

その姿は月光の青い光が反射して 、
どこか憂いを帯びていた 。

gt
 …… で 、オマエはどうだろうなって


紅色の鋭い眼光にじっと見つめられて 、
腕が少し震えた 。


呼吸を整えて 恐怖を隠すように言葉を捻り出す 。

あなた
ふざけないで 、あんたと組んで
私になんの得があるわけ?
gt
理由なんかいらねーよ 
俺が組みたいって言ってんだ


避ける暇もなく 、鎌の刃が首筋に触れる。
冷たい金属の感触に、息が詰まった。

gt
選択肢は二つ 。 死ぬか── 
gt
一か月 、俺と契約して生き延びるか 


答えなんてわかりきってるくせに 、
意地悪そうに片眉を上げて問いかけてくる 。

gt
どっちがいい?


歯を食いしばっても変わりゃしない 。


死ぬのは嫌 、けれど目の前の男に従うのも癪だ 。

あなた
 ……  一ヶ月 、一ヶ月だけなら 。


その返事に機嫌を良くしたのか
ソイツはさっきよりも口角を上げて笑った 。

gt
上等 。じゃ 、契約成立だな


ぐちつぼは鎌を軽く回し 、
消えるように刃を霧散させる 。


そして 私に手を差し伸べてきた 。
おそらく握手の要求だろう 。

gt
よろしくな 、相棒 。
gt
 …… 退屈させてくれるなよ


ゾッとする 。

死神と名乗ったぐちつぼ 、
彼からは先程までの殺気は感じられない 。


代わりに 見定めるような嫌な目線が
絡みついてくる感覚に襲われる 。


思惑通りになってしまっていることに苛立ち、
せめてもの腹いせとして差し伸べられた手を跳ね除けた 。


だが ぐちつぼはそれすらも
ケラケラと笑って愉快そうにする 。


こんなやつが相棒だなんて 、
正直不安とストレスで一ヶ月経たずに
死んでしまうのではないだろうか 。


とりあえず命を繋ぎ止められた安堵と
これからのことに対する不安からため息が漏れる 。






──この時 、私はまだ知らなかった 。


これからの一か月が 、
私の人生を大きく変えることになってしまうことを 。

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