訓練帰り 、家に帰って料理するほどの
気力が湧かなかったので
今日は外食で済ませることにした 。
二人で寄った食堂は 、
古びた木の扉を押すと
油の匂いと出汁の香りが混ざった
温かい空気に包まれた 。
こじんまりとしているが 、
店内に漂う香りは
ほのかに食欲をそそられる 。
昼間は鉄やコンクリートの
無機質な匂いしかしなかったから 、
こうして人の生活の匂いを嗅ぐのは久しぶりだ 。
…… それどころか 、
最近は血の匂いしかしない現場ばかりだったな 。
慎重に向かいの席に腰を下ろすあなた 。
訓練のときの鋭い目つきが嘘みたいに 、
きょろきょろと覚束無い目線で店内を見渡す。
どこか落ち着かないようで 、
それでも少しだけ期待している顔 。
そう言った瞬間 、
ぱっと花が咲いたみたいに
表情が明るくなった 。
その笑顔が意外過ぎて
一瞬言葉を失う 。
へえ … そんな顔 、できるんだな 。
料理が運ばれてくると
あなたは目を輝かせながら箸を取った 。
一口食べた途端 、ふわっと頬が緩む 。
ぽつりと零れたその声は
戦闘の時 、訓練の時よりも
ずっと小さくて … やけに素直だった 。
ぐちつぼはその姿を
ぼんやりと眺めながら 、
無意識のまま顎に手を当てる 。
あれだけ戦いの場では強気で 、
煽られれば反発してくるようなやつが
たったひとすくいの飯で
こんなに無防備な姿を見せるとは思わなかった 。
何気なく口にした言葉に 、
あなたはスプーンを止めて
ムッとした顔で睨んできた 。
つい苦笑いして視線を逸らしてしまった 。
俺の言葉にまた怒りを露わにする
あなたを横目に そっと考えにふける 。
胸のあたりに 、よく分からないもやが残った 。
自分から言ったが
人間っぽいって … なんだ ?
そもそも" 普通の人間 "がどんなものだったか 、
もう俺自身もよく分からない 。
ただ あの笑みを見た瞬間 、
彼女を" 相棒 "としてじゃなく
ただの" 知り合い "として
見てしまった気がした 。

アンケートへのご協力 、ありがとうございました 。
武器は🏹で進ませて頂きます 。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!