あなたside
素敵な夢を見た。
他の人にとったら
大したことない夢かも しれないけど 、
私にとって 、一生の 宝物にしたいくらいの
本当に 素敵な夢 だった 。
“素直で 可愛らしい女の子”だったら 、こういう時 、
きっと「此処行きたい」「彼処行きたい」って
はっきり 言えるんだと 思う 。
だけど 私は鈍感で 素直じゃないから
彼の質問に 質問で 返してしまった 。
それでも 彼は 私を面倒に思ったり せず 、
優しい声で 答えてくれる 。
そう言って 中也は私の頭を撫でた 。
彼の手から伝わってくる温もりが 堪らなく心地よい 。
天井を見上げ 、私の“行きたい場所”を探す 。
確かに 、中也が私と 過ごしたいと
言ってくれたのは 本当に 嬉しかった 。
彼の 数少ない休暇を 私のために 使ってくれる 。
だけど 、折角の休暇が 私の所為で潰れてしまって
良いのか ……、それが 気になってしまう 。
本当は 無理しているんじゃ ないか 。
本当は ゆっくりしたいんじゃ ないか 。
そう考えてしまうと 、
好き勝手なこと 言えるわけが なかった 。
「中也 、最近忙しかったでしょ …?」
私がそう言うと 、中也は少し目を 見開いた 。
そして 再び私の頭を 少し乱雑に撫でた 。
頭が揺らされ 、視界も揺れていた 。
そう言って 中也はニヤリと
悪戯心を通わせる 子どものような笑みを 浮かべた 。
そんな表情を 自然と出来てしまう彼が
かっこ善くて 、思わず 笑ってしまう 。
目が覚めると 、窓の外はまだ 真っ暗だった 。
月が とても上の方にある 。2時くらい だろうか 。
自然と 出てきてしまった 溜め息の理由が
なんだったのか 、私には善く 判らない 。
だけど私の隣で寝る 彼の背中を 見ていると 、
胸がきゅーって 締め付けられるみたいに 痛かった 。
ちょっとだけ 、ほんの ちょっとだけ 、
彼の顔が みたい 。声が 聞きたい 。
そう思って 彼に手を伸ばそうと したけど 、
不意に 冷静になって その手を止めた 。
彼はきっと 、疲れて帰ってきたんだ 。
それなのにこ んな時間に起こしたら 、彼に迷惑だ 。
私は 頭が隠れてしまうくらい 布団を被り 、
枕に 顔を埋めた 。
彼は夢の中で 、私にどんな場所を
おすすめしてくれようと したんだろう 。
そんなことを 考えながら 目を瞑った 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。