身体のあちこちがボロボロの死柄木たちを見て、重複は困ったように苦笑いを浮かべた
死柄木は重複の姿を視界に入れた途端、長く深いため息を大袈裟に吐いた
現…いや元・雄英高校の生徒に、新たなる戦力を加えようと奮闘。そして、ここまでボロボロになるほど、奴に追い詰められていることを知られてしまった
この事を報告され、大勢のプロヒーローでも連れて来られればひとたまりもない
…のだが、報告している様子もないし、先程コンプレスに共闘を求められても、貸しと称して戦っていたし…敵か味方かも分からない未知の存在
そこまで思考して、死柄木はまたため息を吐いた
どれだけ考えても、重複あなたという人物のことを理解することは出来ないと、先程までの思考を放棄した
そこで、トゥワイスの携帯から着信音が鳴った
どうやら相手は"義爛"らしい
重複もコンプレスとトゥワイスの会話を聞きながら、トガヒミコよりも意識をそちらへ移した
先程まで『良い奴』だと語っていたのに…電話に出た最初の言葉が罵倒は、相手も嫌なのでは?と重複は顔も知らない義爛を思った
「彼は悪くない」と言うその声は、恐らく原型が留められていないほど、ボイチェンで加工されていた
これ以上は部外者が聞くべきではないと、情報を得られるかもしれないこの状況で、重複はヴィラン連合から距離を取り、会話を聞かない選択を取った
重複は木々を足場にしながら、軽快に移動していく
そこで何を思ったのか。足を止め、懐からシルバー色のネックレスを取り出した
それは二つで一つになる、ハート型のペアチェーンネックレスというものであった
ギガントマキアと合間見えた時に言われた言葉を、重複はなぞるようにその声に乗せて発した
ネックレスのチェーンを首に回し、金具で繋ぐ
ネックレスのハート部分を摘み、キスを落とした
何処か哀愁ある笑顔で。風に吹かれ、その黒い髪を揺らしながら、重複はそう呟いた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!