第22話

第18夜「人定」
53
2025/04/27 13:01 更新
アリス
アリス
目で受け取る情報だけが全てじゃない。
つぐっちも、こうしてれば分かるよ…
私は意を決して、瞳をそっと閉じた。
目を開いている時よりも、
耳から拾う音が一層研ぎ澄まっているように聴こえる。
 


30m右側、インクを踏む音、
21m左側、地を蹴りあげる足の音、
10m正面、傘を握る音、
5m──────攻撃が来る!!



まずい───そう思って目を開ける。
するとそこは、宙だった。

黒インクをぶちまける彼女の全身が上から見えてしまうくらいの高さ。一応アリスの腕が私の腰に巻きついていて、落ちないように支えてくれているらしい…が。


…いつの間に空中に?
月夜
月夜
えっ、えっ!?
アリス
アリス
ほらねー?つぐっちきこえた?
動きの合間に音がしなかったでしょ。
あたし何回もキョーちゃんと
戦ってきてるけど、未だにどんな動き方してんのかわかんないんだよね〜ほんとすごいと思わないっ?
アリスとアリスに抱えられた私は、そのまま重力に任せて落ちていく。必死にアリスにしがみつきながら、ひとりでずっと呟いているアリスに声をかけた。
月夜
月夜
ちょっ、アリス!?なんで宙っ
アリス
アリス
ん?あ〜アリスちゃんの必殺技、特大ジャンプで〜す♡あっ、チートじゃないよ〜?
ジャンプの高さは軽く見ても建物3階分くらいだろう。…やはり彼女は常人ではないと改めて思い知らされる。
アリスはさぞ当たり前のように重力の衝撃を和らげ、すとん、と私を抱えたまま着地した。
──────その瞬間の攻撃をアリスは見逃さない。

着地したその隙を狙ったチーターの攻撃をするりと避け、後ろに飛び距離をとる。私を抱えながら。
月夜
月夜
アリスっ、そろそろ下ろしてくれても…
アリス
アリス
つぐっちにいいニュースです♡
月夜
月夜
えっ…
アリスは私を抱えたまま、
満面の笑みで私の言葉を遮る。

その言葉も千怜と同じで、
驚きを隠せなかった。
アリスは笑顔のまま続ける。
アリス
アリス
H3の傘との対面、
有利はとれるでしょーか?♡
月夜
月夜
…え?そんなの…
そんなの一目瞭然。カサは1体1を強みとするブキだ。
これは、いいニュースなのだろうか。
月夜
月夜
有利とれないに決まって…
アリス
アリス
だいっせいかい〜っ!!ぱちぱちぱち〜
月夜
月夜
えぇ…?
アリス
アリス
じゃ〜あ、有利とれない相手には
どうやって対面勝つとおもう?
月夜
月夜
…ゴリ押し?
アリス
アリス
ぶっぶー、あたしはつぐっちみたいにポテンシャル高くないのでだめで〜す…正解は、
アリスはふっ、と微笑む。
アリス
アリス
相手の攻撃パターンを把握すること、です♡
アリス
アリス
もっちろん…キョーちゃんのパターンは把握済み。
月夜
月夜
…!!
さすが、世界1位保持者。そんなことも容易くこなしてしまうというのだろうか。アリスは私を優しく地に下ろし、右手のH3チェリーを握りしめ、キキョウさんに向かって走り出した。
アリス
アリス
キミを愛玩(あいがん)させてよ♡
チュイン───!!
 
その音は、すぐに鳴り響いた。H3特有の"あの音"。1発も外さず、3発命中した時にのみ鳴る───
倒れたキキョウさんを悲しそうに見つめた後、アリスはこちらを振り向いて微笑んだ。
アリス
アリス
ね?覚えておくと得だよ♡


















和傘世界1位…?
ウイ…
月夜
月夜
…っ!?
アリス
アリス
っキョーちゃん!?
キキョウさんの今にも消えてしまいそうな細い声。アリスを呼ぶ声だった。アリスはキキョウさんのもとに駆け寄り、しゃがみこむ。
アリス
アリス
キョーちゃ…





和傘世界1位…?
たす、け…て…






2人
!?
私たちは目を合わせる。


───ああ、この言葉で、
"最悪の可能性"が生まれてしまったのだ。






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