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第30話

第23夜「夜風」
35
2025/07/27 13:24 更新
風
お前だけは、絶対に殺す…ッ!!
リコ
そんなに恐い顔すんなよォ、
オレとお前の仲だろ?(笑)
風
…ふざけんなっ、黙れ!!
月夜
月夜
…フウっ?貴方、リコのこと───
リコ
お前が言えねェならオレが言ってやるよ
リコは被っていたお面を、
口が少し見えるくらいまでずらす。
一気に静まったこの場を満喫するように微笑み、
ゆっくりと息を吸って───言い放った。



リコ
3年前───オレがこいつの妹を誘拐したのさ





月夜
月夜
…っ…!?
風
リコ
妹を助けようとしたお前は、チーターと凡人との力の差に絶望する。そして、オレに復讐する為にチートを使い始めた…そうだよなァ?
その馬鹿にしたような話し方が心底気に食わない。


何の力もないお前が、自分一人でなんでもできると本当に思ってるのかァ?──────3年前、あいつに言われた言葉が一字一句はっきりと頭の中で再生される。


何事かと集まってきたイカタコ達、そしてアリス、かぎ、つぐの、息を飲む声が聞こえた。
リコ
チーターになったって、お前はずっと一緒。
自分の無力さに、打ちのめされてろよ
風
…ッ!!
私はもう"何の力もない私"じゃない。

 

私はつぐに耳打ちする。
風
…つぐ、私があいつをチートで…





パァン───

 



乾いた音が静まり返ったこの場に響いた。
私はバランスを崩して、そのまま尻もちをつく。


自分の右頬が───ジンジンと痛んでいた。
月夜
月夜
…フウの力はもう借りないわ
風
───え…?
地べたに座る私の前に立つ、つぐがはっきりと言い切った。私はつぐにぶたれたんだと、今更気づく。
いつもはチーターに向けているはずの、
つぐの怒りの灯った瞳が、しっかりと私を捉えていた。


もう…手は借りない?
なんで?私は───悪くないでしょ?
つぐの言っていることがわからない。


私はつぐを守るんだって。
つぐだってそう言ってたじゃん。なのに───?
風
…なんで?
震える唇から、微かにこぼれ落ちた言葉。
つぐは表情を一切崩さずに、冷たく言い放った。




月夜
月夜
───チーターの手は借りないって、
言っているのよ。




私は、チーター達あいつらと一緒?





つぐは私に背を向け、リコと対峙する。
その小さな背中がとても、怖いと思った。

私なんか、チーターの中の1人に過ぎない、
同罪だ───と言われているようで。
風
つぐ───っ…
暗闇の中、たった1人置いていかれるような気がして、手を伸ばす。



私のその手は───真っ黒・・・に染まった。



月夜
月夜
あ""ッ…!!───…





その光景が、信じられなかった。


呆然と立ち尽くすイカタコ達。
息を飲むかぎとアリス。
本当に楽しそうな笑顔を浮かべるリコ。
苦しそうな声と共に、前へ倒れていくつぐ。
真っ黒・・・なつぐの背中。
つぐへ伸ばした私の手に滴る───黒いインク・・・・・


どさっ、という音と共に、かぎとアリスが走り出す。
2人は動揺と恐怖を浮かべた顔で、
倒れたつぐに駆け寄った。
アリス
アリス
…ッ、つぐっち!!
千怜
千怜
おい…っ、大丈夫かッ!!
リコ
あっははは!!…こりゃ、傑作だなァ
風
…───…はッ…はっ…!!
目の前の状況を理解した途端、
心臓がどくんどくん、と動き出す。

上手く、呼吸が出来ない。

私に、黒インクを使う力があったなんて。
その力で───つぐを傷つけてしまったなんて。
そんなこと───!!



倒れたつぐは、肩で苦しそうに息をしていた。
はぁ、はぁという、か細くて小さな子供の声が、
微かに聞こえる。
リコはこれが見たかったと言わんばかりに、
悪笑を浮かべ、あははっ、と笑い続けていた。
リコ
ははっ、正解だったなァ…3年前、オレの力をお前にあげたのは
風
…は───?何を言って…っ
リコ
お前なら使いこなせると思って、黒インクの能力を埋め込んでおいたんだよ。
流石だな、素質あるよお前。
こいつのせいだったのか、なんて
そんなこと気にしている余裕は無かった。


私の目に映るのは、倒れたつぐと、自分の手。
真っ黒な闇に染まった、自分の───
風
…あぁ、わたし……
リコ
お前はもう、悪者こっち側だ。チートで大切な人を守るだとかふざけたこと抜かしてやがったが…ようやく、化けの皮が剥がれたじゃねェか
風
あ…、あぁ…ッ…
周りのイカタコが、私を非難し叫び出す。

こいつチーターだ、あんな小さな子供を…、酷すぎる!!…
そんな声が、重荷になって私にのしかかる。
自分の犯した罪を再認識させるかのように。
私がチーター達彼らと同じだと…認めさせるように。
月夜
月夜
フウは、悪者じゃ…ないわ…
12歳の子供のか細い声は、
闇に溶けだし掻き消されていった。





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