第2話

やりたい事
61
2019/01/31 13:00
服に取り付けられている連絡機がなっている。


その音で目を覚ました。
所員
CT!今どこにいる!
CT
関係ないでしょ
所員
何も手は出さないから、今のうちに出て来い。あっ!ちょっと…
CT
誰が説得しても、なんて言われても戻らないから
所長
もしもし、CT
CT
…なんですか
所長
昨日さ、満月だったでしょ?
CT
…………
所長
じきに新月になるよ
CT
…新月になっても戻らないから
所長
新月の日、お前はどうやって溶け込むんだ?


私は連絡機の線をぷつりと引きちぎった。
同時に煩わしい声もすっと消えていく。
CT
こんなに簡単に壊れるならもっと早く壊せばよかった…
立ち上がって辺りを見渡すと、どうやらここは公園のようだ。

昨日は暗くて見えなかった遊具が
たくさん置かれている。



とにかく、動かなくては行けない。
私が命懸けで見たいもの、やりたい事を
全て新月の夜までに終わらせなくては行けない。

CT
えーっと…体育館は…
公園に設置されているマップを眺めていると、隣に誰かが立っていた。
リュウ
…体育館に行きたいのか?
背の高い金髪の男性がこちらを見下ろすようにして立っている。
CT
うん、でもどこにあるか分からないの
すると、突然お腹に何かを押し付けられる。
ボールみたいに丸くて、でも中は空洞で…
CT
これ、なに?
リュウ
それ被れ
CT
こう?
リュウ
そう。ついてこい
彼は駐車場の方に歩き出す。
私も慌てて後を追う。

1台のバイクに跨り、後ろをポンポンと叩いた。
リュウ
連れてってやる
CT
あ、ありがとう…
『捕まってろ』と言われ、
よく分からないまま彼にぎゅっとしがみつくと
エンジン音がなりバイクは走り始めた。





リュウ
名前は?
CT
CT
リュウ
しーてぃー?ハーフなの?
CT
本当の名前は知らないの
リュウ
そっか…年は?
CT
15…たぶん
リュウ
俺はリュウ。19。
CT
はあ…
リュウ
見た感じ、帰るとこも金も無いんだろ
CT
ない…けど研究所には戻らない
リュウ
よく分かんねぇけど俺の仲間がやってる店、2階使ってないからそこに泊まりな
上着のポケットに紙をぎゅっと押し込まれた。
リュウ
それ、地図とか書いてあるから着いたらその店のやつに見せろ。
CT
…ありがとう
リュウ
はい、到着
リュウ
体育館で何すんの
CT
死ぬまでにやりたい事するの
リュウ
お前死ぬの?
CT
研究所に戻れば死なない。
でも戻らないから死ぬ。
リュウ
ふーん…
リュウは自分のヘルメットを脱いでバイクから降りた。
リュウ
体育館でやりたい事なんて、どうせひとりじゃ出来ないことだろ
CT
バドミントンってひとりじゃ出来ないの?
リュウ
出来ねぇな
リョウがクスッと笑う。
CT
じゃあ…えっと、どうしよう
リュウ
ここには二人いるけど?
CT
やってくれるの?
リュウ
……これでも小中高はバド部だぞ
CT
ほんとに?!
リュウ
ほら、行くぞ
受付を済ませ、体育館に入る。
ネットを張ってラケットを握ってコート内に立つと、それは何年も憧れてきた景色。
リュウ
意外と上手いじゃん
CT
試合の映像みて素振りしてたの!
リュウ
ほぉ…やるじゃん
体育館には2人の足音と、一喜一憂する声が響いている。






??
あれー!リュウじゃん!
その声に、自転車を停めて小窓から体育館の中を覗いた。
??
そう言えばあいつバド部だったもんな
??
おーっと!女の子とやってるよ!リュウが!
??
……初めて見た
??
あんなに笑ってるのも初めて見たよ、俺
??
確かに
??
そっとしといてやるか!帰るぞ!
??
うぃっす
体育館からの声を聞きながら、2人は冬の太陽に照らされた道を歩いた。

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