服に取り付けられている連絡機がなっている。
その音で目を覚ました。
私は連絡機の線をぷつりと引きちぎった。
同時に煩わしい声もすっと消えていく。
立ち上がって辺りを見渡すと、どうやらここは公園のようだ。
昨日は暗くて見えなかった遊具が
たくさん置かれている。
とにかく、動かなくては行けない。
私が命懸けで見たいもの、やりたい事を
全て新月の夜までに終わらせなくては行けない。
公園に設置されているマップを眺めていると、隣に誰かが立っていた。
背の高い金髪の男性がこちらを見下ろすようにして立っている。
すると、突然お腹に何かを押し付けられる。
ボールみたいに丸くて、でも中は空洞で…
彼は駐車場の方に歩き出す。
私も慌てて後を追う。
1台のバイクに跨り、後ろをポンポンと叩いた。
『捕まってろ』と言われ、
よく分からないまま彼にぎゅっとしがみつくと
エンジン音がなりバイクは走り始めた。
上着のポケットに紙をぎゅっと押し込まれた。
リュウは自分のヘルメットを脱いでバイクから降りた。
リョウがクスッと笑う。
受付を済ませ、体育館に入る。
ネットを張ってラケットを握ってコート内に立つと、それは何年も憧れてきた景色。
体育館には2人の足音と、一喜一憂する声が響いている。
その声に、自転車を停めて小窓から体育館の中を覗いた。
体育館からの声を聞きながら、2人は冬の太陽に照らされた道を歩いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!