あなた side

この人からの連絡なんていつぶりだろう。

夢かと思ってスマホのディスプレイを何度も見返すけど、やっぱりそのメッセージの送り主は高校の時私が思いを寄せていた人。

続けて届くメッセージにあの時の胸の高鳴りと同じものを感じる。

自分の中で再び大きくなるあの時の気持ちをグッと抑えて、冷静にメッセージを返す。

返事にはすぐに既読がついた。

彼からの誘いを断る理由なんて無い。

でも彼に会ってしまったら昔の気持ちを思い出してしまいそうとも思った。

それでも会いたい気持ちには勝てず、行きたいと返事をすると、場所や日程などがすぐに決まっていった。

その日まで着ていく服や何を話そうか、色々考えていたけど、事が上手く行きすぎてちょっと信じられない自分もいる。

彼は今何をしているのかな、あの時から変わったかな、そんなことばかり考えていると約束の日は思ったより早く来た。

少し緊張しながら待ち合わせ場所に向かうと、彼はもうそこにいた。

少し遠くから声をかけると彼は私に気づいて、手を振ってこっちへ向かってくる。

高校時代と何も変わらない、私が好きだった笑顔を浮かべて。

よく話す仲だったとはいえ、久しぶりに会っての会話はぎこちなくなってしまう。

威尊が予約してくれたお店は雰囲気も良くて料理もお酒も美味しかった。

お酒が入ったことで最初のぎこちなさはどこかへ行ってしまい思い出話で盛り上がる。

怒られてた話はもうええから！と笑いながら言う威尊。

少しためらう威尊から発せられた理由が予想外すぎて、口にしていたお酒を思わず吹き出しそうになった。

好きだったのは昔のことなのに、聞いてから少し後悔したのはまだ威尊に気持ちがあるってことなのかな。

威尊の言葉が信じられなくて、放心状態になってしまっていた。

勇気を振り絞って言った言葉はちゃんと彼に届いてくれて、彼は私の大好きな笑顔を向けてくれた。

Fin.