若干の車酔いに耐えながら、車から降りる。
久しぶりに地に足をつけた感覚と同時に、すぐ近くから木とほこりが混ざった独特の匂いがする。
匂いがした方を見る。
随分と古い古民家。
見てると微かに昔の記憶が呼び起こされる。
ここに来るのは、12年ぶりだ。
砂利の道を進み、父さんが戸を開ける。
「おやぁ!いらっしゃい!」
ガラガラ…と開いた戸の向こうから、いかにも優しそうな風貌をした老婆が姿を現す。
「やあ母さん。久しぶり。」
「あんたはもう少し連絡よこしなさいね!
おや!あんたは結留かね!こんなに大きくなってまぁ!」
「あ、はい、どうも。」
言われた通り、僕の名前は結留。輝崎結留だ。
今日は12年ぶりに親戚達で集まる。
そして、今話しかけてきたこの人は多分、僕のおばあちゃんなんだろう。会ったのなんてまだ幼い頃だし、記憶が曖昧だから、正直反応に困る。
「ささ、早くお上がり。もうみんな集まってるよ。」
おばあちゃん(であろう人)は、そそくさと案内を始める。
「そうか。もう…か。」
父さんは少々歯切り悪く返事をする。
母さんの方も表情が曇っているようだ。
確かに長い間親戚同士の付き合いはなかったが、そこまで躊躇う理由でもあるのだろうか。
そんなことを考えながら、僕らはリビングへ案内されていく。
「しっかし正子さん。あんた少し若返ったかい?昔よりももっと綺麗に見えるよ。」
「いえいえそんな!メイクが上手くなっただけですよ。」
「あらほんとかい?最近のメイクはすごいねぇ〜。今度私にも教えてくれるかい?」
「はい。ぜひお教えしますよ。」
『正子』というのは、母さんのことだ。母さんは人と関わる時の礼儀作法をよく知っている。だからこういう時には強い。
母さんが場を持たせているうちに、どうやらリビングに着いたようだ。
おばあちゃんがゆっくりと戸を開ける。
そこからガヤガヤと声が聞こえてくる。
うちの親戚って、どんな雰囲気だったっけ…。
「全くあんたはいつもそうやって鈍臭いんだから!!」
「ご、ごめ」
「だーかーらーいつも謝ってばっかで直そうともしないじゃない!あんたがそんなんだからあの子たちだって…」
「うるっさいわねあんたら!その口二度と開けないようにしてあげましょうか!?あんたらは有能だからいいでしょうよ!うちのことどんだけ…」
「もう鬱陶しい!こんなとこで出てく!」
…………………………
地獄だ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。