第3話

⛩️「異境逍遥」⛩️
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2025/12/25 06:03 更新
神様として目覚めた日の翌朝。



混乱もあったけど、最低限の状況整理はできた。



ボク、『博麗秦』はこの博麗神社の神だということ。


霊夢は昔からの知り合いとして接してくる。


つまり、この世界のボクとしての記憶や人間関係は、前々から存在していたということ。


矛盾が出ないように夜の間に記憶整理をしようとボクは決意した。怪しまれたくないし?



この世界は幻想郷に似てるけど、おそらく同じ名前、つくりなだけの違う世界だ。
ボクの知っている幻想郷には、博麗秦という人物は存在しないし、ね。
もちろん、誰にも話すつもりはないけど。


博麗 シン
……よいしょっと。


神社の縁側に腰掛けて、朝の空気を深く吸う。



驚くほど澄んでいて、胸の奥まで透き通るみたいだ。


博麗 霊夢
__どこに行くのよ。


縁側に座り、緑茶を啜っていた霊夢が、すっと目線だけ寄越す。


巫女服の袖が風に揺れて、赤が朝日で少し明るく見える。


博麗 シン
散歩。
博麗 霊夢
ふぅん。……迷子になっても知らないわよ?


理由ワケも聞かず返事をする霊夢。


ボクがボク博麗秦になる前のボクも、突拍子もなく散歩へ出掛けていたのだろうか。


そんなことを思考しながらボクは答える。
博麗 シン
大丈夫、ボク神様だし。
博麗 霊夢
……寝起きで自分の名前すら忘れてた人が何を言うのよ。
博麗 シン
……あはは。
博麗 霊夢
……まあいいわ。知ってると思うけど行くなら結界のほころびに触らないように気をつけなさいよ。変に触るとなにが起きるかわからないんだから。
博麗 シン
うん、わかってるよ。ありがとう、レイ。
博麗 霊夢
…… その呼び方、昔からだけど慣れないのよね。



霊夢は頬をかきながら、ほんの少し困ったように笑った。



昔から__



この世界の“秦”は、霊夢のことをレイと呼んでいた。
ボクが言ったその言葉は、自然と溢れたわけじゃない。
ボクがこの世界で生きるために、あえて合わせてるだけだ。



……でも、それでも。




博麗 霊夢
いってらっしゃい、秦兄さん。


霊夢がそんな風に言って笑うと、ボクの心は自然と軽くなる。



きっと、この世界の“博麗秦”は、本当に霊夢にとって特別な存在なんだろう。そしてボクにとっても__。


博麗 シン
行ってきます。


軽く手を振り、石段を降りていく。


一段、また一段。


ここを下りることが、ボクにとっては新しい世界への入り口みたいで――。



胸の奥が、不思議と高鳴った。




幻想郷の空気を纏って歩く。いや、正確に言えば宙に浮いているのだが。



鳥の声。


木漏れ日の揺らぎ。



どこか懐かしくて、だけど初めての匂い。



ボクはゆっくりと林道を進む。
博麗 シン
実際に見ると、こんな風なんだ。



もっと派手だったり、もっと不思議だったり、もっと騒がしいと思ってたのに。


実際は、思っていたよりも静かで、綺麗で、どこか現実の田舎道みたいだ。



本物の風、本物の土、本物の木漏れ日。

全部、ボクが知ってた幻想郷とは違う。

似ているけど、似ているだけの“別物”で、現実なんだ。



ワクワクと不安が、胸の中でぐるぐると混ざり合う。


博麗 シン
__ま、とりあえず楽しまなきゃ損だよね。


軽く笑い、歩を進める。


そう、これは 「異境逍遥」


この世界を歩く、旅の始まり。


そして、これからボクは、博麗 秦となってから初めての“異変”に出会うことになるのだと、このときはまだ知らなかった。


異境逍遥(いきょうしょうよう)

意味:見知らぬ世界を自由に歩き回ること
クリスマスプレゼントだぞ☆ByIRIS


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