「……はぁ……ぅ……」
ダメだ。
夜になると思い出す。
いいじゃん。
そいつらが生きてて永遠に恨まれるくらいなら、この判断は正しかった。
それに、私が生きるため、しょうがない。
でも、私、人を……
1人目
成果:5年
9年前
スタンガンを受けたように、口の端から唾液を垂らす彼。
綺麗に結んでいたポニーテールが崩れていく。
次の瞬間、彼の目の中の光が消えた。
「あ、え、なんで……」
「……んでぇ、今日マジダルかったの〜w笑えるっしょ〜w」
……え?
「あ、うん!面白いね……」
猫カフェ。
窓席。
……彼氏?
ここは……
私、何して……?
あ、そうだ
私、彼氏とデートしてたんだ。
思わず、私は彼氏のところに置いてあった抹茶ラテを一気飲みした。
すると、彼氏はびっくりした顔で頭を抱えた。
「ちょ?!それウチのなんだけど?!wガチウケるwww」
笑ってる……怒らないんだ。
この彼氏はノリは軽いが、優しい人だった。
彼氏……と言っていいのか。
一ヶ月前、図書館で初めて彼に出会った。
最初、私が会った時の感想が、素直に
「あのお姉さん、綺麗だなぁ……」
だった。
彼は1番上の本に手を伸ばしていた。
背が高いから、すぐ手が届く。
歴史の本……そう言うの読むんだ。
私は、彼の顔立ちからして、女の子だと思っていた。
長い金髪、ちょっと赤い目。
多分カラコン。
体は……基本的にぺたっとした感じの、しなる系……?美人だった。
仕草も、ネイルでカチッて感じで本に触ったところとか
本を抱いてるとことか……
そんな彼と話したきっかけが、見ていたのがバレて
そのまま、見ていたと言う理由で興味を持たれて、今に至る……
私が彼を男だと知ったのは、次に彼に会った時、彼のすっぴんを見てしまったから。
黒髪のあざとい感じのイケメンだった。
髪の毛はサラサラではなく、ちょっとクセがあるタイプで可愛かった。
彼は男声と女声を使い分けられる人で、目の前で披露してもらったこともある。
いつもは女声で話してる。
性格は基本的に女性っぽい。
オネェという訳でも、オカマという訳でもないけど。
ただ彼氏は、映画とスルメイカと漫画が好きな、明るい人だった。
なんだか、女と男を使い分けてるあたり、私は親近感があった。
この人なら、「男装してみた!」とか言って、男の姿になってもバレない、なんて。
その頃私が生きてるかなんて、わからないのに。
……え、私、この人殺そうとしてるの?
寿命奪ったら死んじゃうよね?
初めての頃は、そんな当たり前のことがずっとグルグルと浮かんでいた。
普通の人から寿命を奪おうとしても、奪えない。
奪えるけど、私の寿命に+されないから、意味がない。
なら、彼から奪うしかない。
でも彼はいい人で
私の心配もしてくれる。
前、私が甘ったるいスイーツを食べて具合が悪くなって吐いた時
彼は笑いながらも、背中をさすってくれた。
「あちゃ〜、ごめんね。
ここ、ちょっと甘すぎたよね。
実は、ウチもスルメイカの方が好きなんだよね。
ほら、大丈夫大丈夫〜〜……」
スルメイカって……余計消化に悪い気が……
でも、その時の私には、本当に心強くて、頼れる「彼氏」だった。
のに。
……そんな人を、殺そうとしてるの……?
「……ゲホッ、ゴボッ……!」
彼との食事。
家から近いファミレス。
でも他より少し美味しい気がして
私たちのスミカみたいになっていた。
2人で美味しく料理を満喫中。
またもや、私はむせた。
最近、そう言うのが多い。
彼は慌てて自分の黒セーターの腕をまくり、私の横にスライドして座った。
そして、優しく背中をさすってくれる。
……意外と鍛えているのか、男らしい腕。
いつもは見るだけで、安心できた。
だけど、今日の咳は、なんかおかしい。
喉の奥から、込み上げてくる。
「……おぇっ……」
吐いたものは、食べ物ではなかった。
手のひらに、真っ赤につく、赤いもの。
ちょっとじゃない。
指と指の隙間から、私のスカートに落ちた。
彼氏は顔を真っ青にした。
「……ねぇ、何、何それ……」
そう言って、隣で固まっていた。
……そうか、私、元々心臓の病気……
血が出るのは、心臓に穴が空いたり……いや、そこまではないと信じたい。
あと、寿命も少しだよね。
数ヶ月とか……
このまま寿命を奪わないと?
……死ぬんだ。
それが、明確にわかった。
彼氏は、首を首を傾げていった。
不安に揺れる声。
女声を保てなくて、本来の響くような低音で話し始める。
「……もう、外食はよそうか。次、ウチと病院に行こう。」
私はゆっくり頷いた。
彼の目をチラッと見る。
彼は、全く笑っていなかった。
嫌われてないよね。
嫌わないでほしい。
殺そうとしてるくせに、そう思う。
次っていつ?その時まで私、生きている?
どうせ、私が死んだら会えなくなる。
寿命を奪ったら、今の心臓治ったりする?
今逃したら、次チャンスはない。
だったら……
……嫌われる前に、やらないと……
「……ねぇ、今日、私の家に来ない?」











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!