冷たい海水が私の体温を奪う
服が肌に張り付いて気持ち悪い
穏やかな海、風も吹いておらず波もない
私が一歩前に踏み出す度に揺れる海水
あぁ、気分がいい
やっと死ねるのだから
歌詞を覚えておらず殆ど適当な鼻歌
遺書は書いた……まぁ、遺書というより太宰治個人への手紙だが
何分、私には両親や親しい友人はいないのでいつも私の邪魔をする太宰治へ思っていた事を書いただけのものだ
海水が腰の辺りまで来たところで後ろを振り返る
いつも包帯を巻いて、少しふわふわした茶髪の彼はどこにも居ない
私を邪魔するものは何もない
止めた歩みを動かして、海の底へ向かう
バイバイ、治
今行くよ、作之助
そっちに行ったら沢山怒って、沢山思い出話を聞いて聞かせてくれ
遺書
太宰治へ
私はお前が嫌いだ、殺したいくらい嫌いだ
いつも私の邪魔をして死なせてくれない
お前も自殺をするのに何故止めるのか、自殺の協力でもしてくれればいいのにとも思った
いつも私の勇気を踏み躙り邪魔をする、嫌いだ
ただ、あの日々が楽しかった
私が自殺をしようとして、お前が変な言い訳を言い邪魔をする
他の人たちから見れば奇妙な日常だったが、その日常が私はとても楽しかった
お前が私に告白をして来て、私は死んだ時未練が出来そうだった
……まぁ、そうだな
最後にその返事でもしようか
私はお前が嫌いだった
過去形だ、今は好きだ
今頃私は死んでいるだろな
だから太宰治、お前は生きていた時の私を恋人として扱え
死んだ私は作之助と過ごすよ
私が死んだ後、お前を呪ってやる
呪いの内容は…そうだな、お前が自殺しても死なない様に邪魔して、老衰で死なせてやる
今までのお返しだ
せいぜい自殺未遂を一生し続けろ。
お前の恋人より
一つ二つ、涙が遺書に落ちインクが染みる
あの時以来の涙
太宰治、彼の友人織田作之助が目の前で息を引き取った時と同じ涙
昔の時の様に声を上げて泣く事はなく、静かに、ただ静かに涙を流し自身の恋人との思い出を思い返し泣き続ける












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。