第5話

#5 知ってるよ
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2026/07/17 09:39 更新





パタン、ドアが閉まる。




元気すぎる1年生たちの足音が廊下に遠ざかっていくのを聞きながら、

俺はソファに深く背を預けた。






ln.
行っちゃった
ln.
急に部屋が広くなったみたい





謎のキーホルダーを机に置き、

俺は

窓際のデスクに座るらんらんに目を向けた。






夕暮れのオレンジ色の光が、彼の桃色の髪を透かして、

まるで溶けてしまいそうなほど綺麗に縁取っている。





sc
お疲れ様、らんらん






俺が声をかけると、らんらんは
ln.
ふふ、ありがとう、すち

と、いつもの笑顔で応えた。





sc
いえいえ !
……でもね、俺は知ってるんだよ。



らんらんがこうして「 完璧 」であればあるほど、

その中身が少しずつ削れていっていることを。






ilm.
らん、お前やりすぎだろ
ilm.
なんでそこまでして、アイツらが欲しいんだよ





隣で資料をトントンと揃えていたいるまちゃんが、

呆れたような、

でもどこか気持ちを隠しきれない声で言った。





いるまちゃんは、

らんらんの隣を歩く権利を誰よりも強く主張している。






ln.
そう ? 
ln.
普通に接したつもりなんだけど
ilm.
普通はあんな至近距離で顔覗き込んだりしねーよ
ilm.
……特にあのみことって奴、顔真っ赤だったぞ





いるまちゃんが少し不機嫌そうに鼻を鳴らす。


あはは、いるまちゃん分かりやすいなぁ。






sc
いいじゃん、いるまちゃん
sc
らんらんはみんなのアイドルなんだから
sc
ね~、らんらん ?
ln.
やめろやめろ 笑
ilm.






俺は立ち上がり、

らんらんのデスクまで歩み寄った。



近づくと、ふわりと香る。




甘い桜の匂い。






ln.
……すち ?






らんらんが不思議そうに首を傾げる。


俺はその肩に、

わざとゆっくりと手を置いた。




指先から伝わってくるのは、薄い制服越しのらんらんの体温。






sc
らんらんの笑顔は、毒だね
sc
一度浴びたら、みんなおかしくなっちゃう





俺は、彼の耳元で囁くように言った。


らんらんの瞳が、

一瞬だけ揺れる。


完璧な仮面に、ほんの少しだけヒビが入るその瞬間が、俺はたまらなく好き。






ln.
……変なこと言わないでよ
ln.
俺は、みんなに喜んでほしいだけだよ
sc
ふ~ん






らんらんは困ったように笑って、俺の手を優しく払った。

その拒絶さえも、品があって美しい。





ln.
さてと
ln.
俺もそろそろ仕事戻らなきゃ
ln.
行事の予定、まだ終わってないから






らんらんは再びペンを握り、

机に向かった。




その背中は、凛としている。





sc
( ……ねぇ、らんらん )
sc
( 君がその香水の匂いに縋らなきゃ生きていけないこと、俺はちゃんと気づいてるよ )





俺は再びソファに戻り、スケッチブックを開いた。




描くのは、もちろんらんらんの横顔。

いつか、

この完璧な仮面が剥がれ落ちて、君がぐちゃぐちゃに泣きじゃくる日が来たら。





その時、一番近くで君を抱きしめるのは、俺がいいな。












……なんてね。







sc
いるまちゃん、そんな怖い顔しないでよ
ilm.
るせぇ、すち
ilm.
……おい、らん、根詰めすぎるなよ





いるまちゃんが甲斐甲斐しく動き出すのを見ながら、

俺は心の中で小さく笑った。







この生徒会室は、甘い桜の香りに満ちている。








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