パタン、ドアが閉まる。
元気すぎる1年生たちの足音が廊下に遠ざかっていくのを聞きながら、
俺はソファに深く背を預けた。
謎のキーホルダーを机に置き、
俺は
窓際のデスクに座るらんらんに目を向けた。
夕暮れのオレンジ色の光が、彼の桃色の髪を透かして、
まるで溶けてしまいそうなほど綺麗に縁取っている。
俺が声をかけると、らんらんは
と、いつもの笑顔で応えた。
……でもね、俺は知ってるんだよ。
らんらんがこうして「 完璧 」であればあるほど、
その中身が少しずつ削れていっていることを。
隣で資料をトントンと揃えていたいるまちゃんが、
呆れたような、
でもどこか気持ちを隠しきれない声で言った。
いるまちゃんは、
らんらんの隣を歩く権利を誰よりも強く主張している。
いるまちゃんが少し不機嫌そうに鼻を鳴らす。
あはは、いるまちゃん分かりやすいなぁ。
俺は立ち上がり、
らんらんのデスクまで歩み寄った。
近づくと、ふわりと香る。
甘い桜の匂い。
らんらんが不思議そうに首を傾げる。
俺はその肩に、
わざとゆっくりと手を置いた。
指先から伝わってくるのは、薄い制服越しのらんらんの体温。
俺は、彼の耳元で囁くように言った。
らんらんの瞳が、
一瞬だけ揺れる。
完璧な仮面に、ほんの少しだけヒビが入るその瞬間が、俺はたまらなく好き。
らんらんは困ったように笑って、俺の手を優しく払った。
その拒絶さえも、品があって美しい。
らんらんは再びペンを握り、
机に向かった。
その背中は、凛としている。
俺は再びソファに戻り、スケッチブックを開いた。
描くのは、もちろんらんらんの横顔。
いつか、
この完璧な仮面が剥がれ落ちて、君がぐちゃぐちゃに泣きじゃくる日が来たら。
その時、一番近くで君を抱きしめるのは、俺がいいな。
……なんてね。
いるまちゃんが甲斐甲斐しく動き出すのを見ながら、
俺は心の中で小さく笑った。
この生徒会室は、甘い桜の香りに満ちている。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。