【星火視点】
放課後の教室。李明さんが体調崩したとかで営業できない日。夕焼けの中、あたしはイヤホンでヨルから送られてきたピアノを演奏している映像を観て、聞いていた。
窓から吹いてくる風が、あまりにも冷たかった。氷がそのまま空気になった〜、みたいな?だめだ、語彙力ない。
……そういえば。
高校1年生のとき、『live』結成1年で、絶讃曲作りと推し活に励んでいた頃。
『VISTY』のセンター、御山京が脱退。『VISTY』大炎上で崖っぷち化、本人たちは何も悪くないのにアンチが殺到してた。
その少し前の話と、その頃の話をしようと思う。
あたしは去年──、高校1年の時、クラス替えで偶然甘太郎と同じクラスになった。
席は、1回目は離れまくってて運が悪かったってちょっとだけ思ったけど、推しと同じ酸素吸ってるって事実だけでいきていけるくらいだった。
2回目は斜め前の席で、超ラッキー!って思いながら授業やらテストのときはだいたい内容そっちのけで甘太郎ばっか見てた、うん、重症。
甘太郎に直接話しかけに行くステラを見て、「見る目あるねぇ、可愛くてかっこよくて最強だろうあたしの推し!」というよくわからん目線で内心ドヤっていた。
けど『VISTY』から京ちゃんが脱退。
それからというもの、甘太郎へ直接アンチを言いに行く元ステラたちが大量発生。
別クラス、別学年からもわざわざ言いに来る奴がいて、近くにいたあたしは、嫌な気持ちでもやもやばっかりしてた。
そんなある日の、放課後のことだった。
話し声が聞こえて、ドアの近くに隠れた。
隠れながら耳を立て、少しだけ顔をのぞかせて教室の様子を見た。
その言葉を聞いた瞬間、あたしは飛び出して教室のなかに入っていってしまった。
入っていって、女子3人と甘太郎の間に入り込み、1人にビンタを食らわせた。
許せなかった。甘太郎は、あたしにとって世界一の推しだ。
脱退した京ちゃんも、残った憧吾さん、斗真さん、葵くんも。みんなみんな、大好きだった。
それを侮辱されて、許せなくて。
腸が煮えくり返っていた。
で、甘太郎の目の前ってことを忘れてそのまま怒りに任せて放送事故レベルの暴言を吐き散らかし、持ちうる語彙力のすべてで女子軍団を攻撃。言い返せなくなったところで追い打ちかけたら逃げていった。
その時あたしは思いました。
こ れ 絶 対 死 ん だ 。
その後なんとか落ち着いたあたしと甘太郎は、2人だけの教室で話をした。
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初めてみたあなたが、星のようにきらきらしてた。
忘れられないくらい、鮮烈な輝きだった。
あの時、あたしは天使に出会ったのだと思った。
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大好きだからこそ、飛び出してしまった。
大好きだからこそ、認知とか絶対されたくなかった。
過去の記憶から意識を戻せば、暗くなりかけた空が見えた。
そう言って2人で笑い合った。
甘太郎の押しに負けて、折れて形は友達になった。
今こうして話せているのも、そのおかげなのを知っている。
ファンとアイドル、というのにかわりはないけれど。学校やプライベートでは、“普通の友達”でいいのだろう。
普通だったら、絶対にありえない。
………これからも、少し歪かもしれないこの関係が続いたら。
きっとすごく、楽しいよね。

ありがとうございます!






















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。