第48話

まるで奇跡みたいだ。
26
2026/01/08 00:16 更新
【星火視点】
星火
星火
ん〜………やっぱこの曲好きだなぁ、綺麗だし……!ふふ、ヨルに大感謝〜〜!
甘太郎
甘太郎
ヨルって、ネットで知り合ったっていう?
星火
星火
ぎょえわっ!?……びっくりしたぁ……急に声かけてこないでよぉ
甘太郎
甘太郎
えー?ダメ〜?
星火
星火
いつでもお声をかけていただいて大丈夫ですありがとうございます誠に申し訳ありませんありがとうございます
甘太郎
甘太郎
落ち着いて!?
放課後の教室。李明さんが体調崩したとかで営業できない日。夕焼けの中、あたしはイヤホンでヨルから送られてきたピアノを演奏している映像を観て、聞いていた。
星火
星火
最近はもうすっかり冬だよねぇ。息も白いし、日が沈むのが早くなってきた
窓から吹いてくる風が、あまりにも冷たかった。氷がそのまま空気になった〜、みたいな?だめだ、語彙力ない。
……そういえば。
星火
星火
もう、あれから1年は経ったかなぁ
甘太郎
甘太郎
あれでしょ?僕が星火と友達になるきっかけになったさ
星火
星火
うん、よく覚えてるね甘太郎
甘太郎
甘太郎
忘れるわけないじゃん。……あのとき、僕は星火に救われたよ
星火
星火
……そっか

高校1年生のとき、『live』結成1年で、絶讃曲作りと推し活に励んでいた頃。

『VISTY』のセンター、御山京が脱退。『VISTY』大炎上で崖っぷち化、本人たちは何も悪くないのにアンチが殺到してた。

その少し前の話と、その頃の話をしようと思う。
あたしは去年──、高校1年の時、クラス替えで偶然甘太郎と同じクラスになった。

席は、1回目は離れまくってて運が悪かったってちょっとだけ思ったけど、推しと同じ酸素吸ってるって事実だけでいきていけるくらいだった。
2回目は斜め前の席で、超ラッキー!って思いながら授業やらテストのときはだいたい内容そっちのけで甘太郎ばっか見てた、うん、重症。

甘太郎に直接話しかけに行くステラを見て、「見る目あるねぇ、可愛くてかっこよくて最強だろうあたしの推し!」というよくわからん目線で内心ドヤっていた。
けど『VISTY』から京ちゃんが脱退。
それからというもの、甘太郎へ直接アンチを言いに行く元ステラたちが大量発生。
別クラス、別学年からもわざわざ言いに来る奴がいて、近くにいたあたしは、嫌な気持ちでもやもやばっかりしてた。
そんなある日の、放課後のことだった。
星火
星火
ふふふーん、ふふんふーん、ふふーん、ふっふーん♪きょーっうもおっしはちょーかっわいいー♪……って、ん?
.
────!
.
──────
.
〜〜〜〜〜〜!
星火
星火
……?
話し声が聞こえて、ドアの近くに隠れた。
隠れながら耳を立て、少しだけ顔をのぞかせて教室の様子を見た。
.
アンタのせいじゃないのぉ、京の脱退ってさぁ!?
.
アンタもトラックメーカーだよね!?嫉妬していじめてたんじゃないの!?
.
ほんといい加減にしろよ!!!なんとか言ったらどうなのぉ!?
甘太郎
甘太郎
ち、ちが、僕は……!
.
うるっせぇなあとっとと認めろよ!
.
お前ら残り組なんて、京がいなきゃゴミだろうが!!!
星火
星火
っ!
その言葉を聞いた瞬間、あたしは飛び出して教室のなかに入っていってしまった。

入っていって、女子3人と甘太郎の間に入り込み、1人にビンタを食らわせた。
星火
星火
こん……のっ!!!!!
.
痛っ!!!何すんのよ!!
星火
星火
こっちのセリフだわ!!!!手がかりも証拠もなんにもないのに決めつけんなよ!!!!あとゴミなんかじゃねぇわ!!!!
許せなかった。甘太郎は、あたしにとって世界一の推しだ。
脱退した京ちゃんも、残った憧吾さん、斗真さん、葵くんも。みんなみんな、大好きだった。

それを侮辱されて、許せなくて。
腸が煮えくり返っていた。
星火
星火
三州甘太郎は、『VISTY』のKANTAROは、あたしの世界一の推し様だ!!!!可愛くて、かっこよくて、愛されるためにきっと……たくさん努力して、甘太郎のトラックも京ちゃんのとはまた違う良さがある!すごく明るくて、あたしの支えなんだよ!
甘太郎
甘太郎
……花踊さん……?
星火
星火
推しを侮辱されて、いい気で入れるわけない!!!あんたら京ちゃん推し?それとも誰か別がいる?まぁ関係ないけどさ、あんたらいっぺん自分の推し侮辱されてみ?どんな気持ちになるよ!?!?!
.
……っ!
.
うるさいわね!アンタに関係ないでしょ!!
星火
星火
ある!!!!
星火
星火
あたしの世界一の推し、侮辱すんじゃねぇよこのクソアマ共!!!!やるなら裏垢か鍵垢でやれっーの!!!!
で、甘太郎の目の前ってことを忘れてそのまま怒りに任せて放送事故レベルの暴言を吐き散らかし、持ちうる語彙力のすべてで女子軍団を攻撃。言い返せなくなったところで追い打ちかけたら逃げていった。
星火
星火
2度と甘太郎に手ぇ出すんじゃねぇぞこのやろー!
甘太郎
甘太郎
………えっ、と
星火
星火
……アッ
その時あたしは思いました。




こ れ 絶 対 死 ん だ 。
星火
星火
誠に申し訳ございませんでしたァァァァァァ!!!神聖なる貴方様の御前であまりにも醜く汚い暴言を吐き散らかしなおかつ1人には手をあげてしまいました誠に申し訳ございません死んでお詫びいたしますぅぅぅ……
甘太郎
甘太郎
待って待って待ってそこまではしなくていい!
その後なんとか落ち着いたあたしと甘太郎は、2人だけの教室で話をした。
甘太郎
甘太郎
……花踊さん、なんで助けてくれたの。僕……、僕、は……
星火
星火
………三州くん、あたしね。もうバレてるかもなんだけど……あなたが推しなんです
甘太郎
甘太郎
……僕?
星火
星火
うん。……あたし、家族みんないなくなっちゃったんです。自分も家族と同じ場所に行こうとした時、ある人に救われて……、今はその人と一緒にいます。でも、その人と一緒にいても、なんだか心が晴れないままで。そんな時に、テレビであなたを見たんです



…………………………………………………………………………………………………………
甘太郎
甘太郎
『ステラのみんな〜!』
甘太郎
甘太郎
『今日も1日お疲れ様!なーんにも上手くいかなくて、泣いちゃう日もあると思うけど』
甘太郎
甘太郎
『そんなときは僕を見てね!ありのままが何より素敵な君を、僕の可愛さで癒してあげちゃう!』
星火
星火
………
初めてみたあなたが、星のようにきらきらしてた。
星火
星火
……だぁれ、この子……?
刹那
刹那
星火?どうしたの
星火
星火
テレビで、アイドルが出てて……気になったんだけど、今日始めて見た人たちでさ
刹那
刹那
ふーん。それって、甘太郎?
星火
星火
甘太郎っていうんだ、あの子
刹那
刹那
うん、『VISTY』ってグループ。すごく素敵なんだよ
星火
星火
……そうなんだ……
忘れられないくらい、鮮烈な輝きだった。
あの時、あたしは天使に出会ったのだと思った。
…………………………………………………………………………………………………………
星火
星火
あの日、あたしは三州くんって天使に出会った!救われた気がしたの、あの言葉に。……だから同じクラスになった時、うれしかったの。もしかしたら、甘太郎のことが大好きなステラがいるんだって、それだけ伝えられるかもしれないって。……認知とかは、されたくなかったけど
甘太郎
甘太郎
……どうして?
星火
星火
認知とか、そういうのはいいんだよ。それくらいがいい。ファンとアイドルの距離感を違えたくないんです。……でも、それだけ伝えたかった。ずっといるから、立ち止まってしまっても、いつかは前を見てほしい。
甘太郎
甘太郎
……
星火
星火
……三州甘太郎を、そして御山京がいた『VISTY』、今の『VISTY』も、全てを愛してるステラが、少なからずここにいるんだって!それだけ、知ってほしくて。……本当は、あなたに話しかけるつもりはなくて、でも……あたしにとっての世界一の推しを侮辱されたら、そりゃ怒るよって

大好きだからこそ、飛び出してしまった。
大好きだからこそ、認知とか絶対されたくなかった。
甘太郎
甘太郎
……そっか、ありがとう!……ね、花踊さん
星火
星火
?、はい
甘太郎
甘太郎
……僕、今グループがあんな状態でさ。クラスではあんまり居場所なくて、友達も……いなくて、いつも1人で寂しいんだ
甘太郎
甘太郎
だからさ

























甘太郎
甘太郎
僕の友達になってよ、星火!
星火
星火
懐かし〜。もう1年だよすごいよね。しかも今年もクラス同じだったし
甘太郎
甘太郎
ね!
過去の記憶から意識を戻せば、暗くなりかけた空が見えた。
甘太郎
甘太郎
……ありがとうね、あの時助けてくれて。
星火
星火
思えば、あの日があったから今があるんだよね。……でも、「友達になって」って言われたときはびっくりしたよ〜。推しと友達なんてあってはならない禁忌だと思ってたし
甘太郎
甘太郎
実際すごい勢いで断ってたもんね。僕傷ついたんだからね〜?
星火
星火
それはマジでサーセン
そう言って2人で笑い合った。
星火
星火
でも、今はこうして話してる
甘太郎の押しに負けて、折れて形は友達になった。
今こうして話せているのも、そのおかげなのを知っている。

ファンとアイドル、というのにかわりはないけれど。学校やプライベートでは、“普通の友達”でいいのだろう。
星火
星火
……奇跡みたいだ、あたしは甘太郎に救われて、ファンに、ステラになって
甘太郎
甘太郎
僕は星火に救われて、友達になりたいって思って、今実際友達で居られて
星火
星火
……それって、やっぱりすごい奇跡だ。
普通だったら、絶対にありえない。
甘太郎
甘太郎
……星火
星火
星火
どしたー?
甘太郎
甘太郎
今日お店行っていい?練習終わったら、みんなで
星火
星火
まじ!?いいよいいよ、ウェルカム!
甘太郎
甘太郎
やった!


………これからも、少し歪かもしれないこの関係が続いたら。



きっとすごく、楽しいよね。
ありがとうございます!

プリ小説オーディオドラマ