壁掛時計が規則正しく鳴り響く中、俺は机の上に置かれた書類に目を通す。
煙草を咥えて新聞を広げ始める鬱先生。
まずはβ国での「β国火事事件」についての新聞記事を取り上げる事にした。
その情報を掻き集めてくれたのは遊撃隊2番隊長のシャオロン…のはずだが。
ある程度情報を集めたから会議室に集まってくれとインカムに入ったから来たのに、当の本人は会議室に居ない。
それどころか、此処に来るまでにも彼奴を見かけなかった。
そう言うと鬱先生は白い煙を吐き出す。
企画しといて自分が来ないなんて、彼奴からすれば日常茶飯事。
期待するだけ無駄か、と納得して手元の新聞に目を移した。
_β国の誇り高き王家、ガルシア一族の王城が焼失。
事件当時の記事。ガルシア一族とはβ国一王族だ。
その新聞には、夕方に放火されたという事、王族の誰一人として発見された者が居ない事、犯人は見つかっていない事が記載されていた。
当時のβ国内は吃驚と恐怖が錯乱して、国民が政府に対してデモを行う程にまで達したらしい。
近くにあった新聞紙を自身に寄せて身をかがめると、鬱先生が近くにあった椅子を俺の傍に置いてくれた。
何か飲み物を取ってくる、と踵を返した背中に礼を呟くと、俺は椅子に腰掛けてその新聞に目を通した。
…これは1年前の記事のようだが、先程の見出しに使われていた写真と同じ物が使われていた事を些か疑問に思う。
_調査から早1年。犯人の行方や如何に。
この頃もまだ真犯人が見つかっていなかったのだろうか、記事にはガルシア一族が今まで成し遂げてきた偉業等が記載されていた。
_政府は火事ではなく火災だと言い張る。
_実は、王家一族は他国へ出向いていた。
…読めば読む程矛盾点が浮き彫りになり、正確な情報が読み取れずにいた。
1年前までの情報をまとめると、ガルシア一族の王城は放火では無く不慮の事故と政府は言っており、その当時に一族は城内に居なかったが未だに行方を眩ませている…という、滅裂な狂言に近しい状態になった。
不意に、壁越しに何者かの気配を察知する。
扉の方をきつく睨めば、相手は観念したかのように扉をゆっくり開けた。
気配の正体であるシャオロンは、新聞の束を片手に机へと近付く。
そう言って煙草を取り出そうとするも、鬱先生が飲み物を取りに行っている事を思い出し手を止める。
その光景を見てか、シャオロンが口を開こうとした途端に扉が勢いよく開いた。
鬱先生は指差された場所へと移動し、トレーやコップを置き始める。
その様子を見ていると、不意に目の前に新聞を突き出される。
これで火事事件について記載されてるのは全部や、と自慢げに笑うシャオロンに礼を言って受け取る。
酷い、と汚い声を上げる鬱先生を横目で見た後に新聞へと視線を落とす。
_国内で再びデモが多発。
記事には「やはり火災ではなく放火によるものだ」と言い張り政府に対してデモを行う集団の写真や、白骨化した遺体について語られていた。
次の記事を見ようと新聞の裏を捲った途端、ガルシア一族の遺品のような画像がでかでかと貼られていた。
思わず身を引くと、それに気が付いた2人が両側から新聞を覗き込む。
俺達は黙々と記事を読み進めた。
政府の言い分は、2年間も捜査し続けて犯人が見つからないのだから放火の線は薄いとのこと。
その割には遺品は綺麗に残っており、焼き爛れた物もあるが、刃物で切り裂かれたような跡や血痕が着いているものもあった。
シャオロンの言葉に、俺と鬱先生は頷く。
鬱先生の指差した一文を読む。
_デモの首謀者は、この遺品の中に王子の物が無いことを指摘している。
ガルシア一族は、使用人含め計20人の小さな王族。
使用人や女王の遺品はしっかり残っているのに、王子の物は何一つ残されていなかった。
その言葉に鬱先生が頷く。
2年前_王子は俺達の3個下だったはず。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。