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第1話

#1
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2024/02/28 01:22
 桜が舞い落る4月。高校二年生になってからの初登校日。いつもなら幼馴染の2人と下校するが、先生に呼び出しくらっているらしく、私は1人で帰る羽目になった。

「……桜散るの、早いなぁ。」

 小学校から中学校まで私は東京ではなく宮城に住んでおり、宮城では4月が桜の見頃の為そう感じてしまう。
 家は学校の徒歩圏内にあるため、このまま直帰してもいいが、買いたいものがあるのだと思い出し駅へと歩き始めた。

「ありがとうございましたー」

 買いたいものを買え、今日の夕飯は前からおばさんが今日仕事だからよろしくねと頼まれていたはずだ。まぁ、最寄り駅から近いスーパーでいいかなと思い。駅へと向かう。

 帰る途中、ハンカチを落とす瞬間を見た。ポケットからポロッと落ちてきたハンカチはガーゼタイプで紺色を基調としているハンカチだった。私はすぐに落ちたハンカチを拾い上げ、落としたであろう紺色のブレザーの人を追いかけた。身長は高く見失うことは無かったが足が早く人混みのためにあまり前に進める状況ではなかった。

 やっとの思いで追いつき、背中を軽く叩く。
そうするとこちらを振り向いてくれた。

「あの、ハンカチ落とされましたよ。?」

と声をかけると男の人は焦ったようにポッケに手を突っ込み、確認すると、

「すみません。ありがとうございます。」

と私の差し出したハンカチをスっと持ち上げ軽く会釈した。
 そのタイミングよく、歩いてきた男性がぶつかり、その手に持っていたコーヒーが二人の服にかかった。
 謝りもせずに、逆にお前らが悪いばかりに睨みをきかせて早歩きでその場を離れていった。

 私のハンカチを落とした彼の服はコーヒーがかかっており、私は彼に話しかけようとすると上から舌打ちが聞こえ、私は声を出すのを躊躇った。

「来て。」

と彼はいい、 私の手を強引に引っ張り歩き出した。

 連れてこられた先はちょっと歩いたところにある小さな公園だった。被害は彼は、ブレザーにはかかった様子がなくワイシャツにかかり、私はブレザーにもワイシャツにもかかっていた。

「…替えの着替えとかはあるの?」
「今日始業式だけだったから持ってきてなくて……」

と言うと彼はゴソゴソとバックからジャージを取り出した。

「これ、まだ着てないからそこのトイレで着替えてきて。」

と命令口調で、長袖のジャージを手渡してきた。
私は言われた通りにはいと返事をしてそそくさとトイレ走った。
 私は個室に入り、服を脱ぎ始めた。
何故こんなにも初対面の私に対して、彼は優しくしてくれるのだろうともんもんと考える。顔からして“The・対人能力バリ高雄”って感じでもないし、なんなら根暗系な顔をされていた。(マスクしてたし…あんまりわかんないけどね…)もんもんとしている時間も勿体ないと思い、すぐに借りたジャージに腕を通した。ジャージはすごくいい匂いがした。
 汚れたワイシャツを持って外へ出ると、彼は学校指定であろうジャージの長ズボンとスポーツブランドである半袖を着て、シミ取り剤を使って自身のワイシャツのシミを取っていた。彼は私に気づき後ろを振り返ると

「……サイズは……丁度ではないな。」
「はい…でも貸して頂いただけでも感謝なので…」

彼をよく見ると多分身長190近くはあるため、150前後の私では当然大きすぎるのである。

「それじゃ、ワイシャツ貸りていい?シミ抜きさせて。」

と前に腕を出されたため、私はお願いしますとワイシャツを渡した。
 そうすると彼は自分の分のワイシャツを上の方に乗せ、私のワイシャツの染み抜きをし始めた。
 手持ち無沙汰になった私は隣にあったブランコに座り、彼に気になっていたことを聞いてみた。

「こんなことを聞くのもあれなんですけど、なんで初対面の私に対してこんなにも…色々してくれるのですか?」

その時彼の手がピタッと止まった。が、すぐに

「貴女が俺のハンカチを拾ってくれたからですよ」
「そんなそんな!大したことじゃないですし…」
「俺にとっては大したことなんですよ。」

その言葉の意味が分からずそこで会話が途切れた。
私は気まずい雰囲気が苦手なため、ブランコを漕ぎ始めすぐさま新しい話題を出した。

「私!あなたの名字あなたって言います!失礼ながらお名前を聞いてもいいですか?」
「俺は……………… オ ミ…。。」
「臣さんかぁ。覚えました!」

私はブランコを漕いたため、声が聞き取りずらく名前が少ししか聞き取れなかったけど、もう1回聞くのも野暮だから、そのまま聞こえた通りを読み上げた。

「臣さんは、高校生ですよね??」
「そうだよ。」
「高校何年生…いや!当てます!3年生!」

私は目を輝かせてそう言い放った。だって、こんなにも身長が高いし、大人の余裕ってやつがあるのは同い年か年下なわけないと思ったからだ。

「……フフッ…井闥山学園の2年だよ。」
「マジですか!同い年ですね!!それじゃぁ、敬語取っちゃってもいいか。」


トイレでは色々なことを考えていたが、本当はそうでも無い感じなのかな?とか思い始めてきた。

 ブランコを漕ぐのをやめて、臣くんをじっとみつめた。
マスクをしててもわかる顔の良さ。
ちょっと死んでるような目。
寝不足ぽい目付き。
くせっ毛なのか天パなのかすごくクルクルした髪の毛。
半袖から見える腕はスポーツをしていそうな腕。
足は長ズボンで見えないが、多分凄く長い。長い。
私のシャツを洗う臣くんの手はゴツゴツしていて男の手だなぁと思った。

「…何?そんなに見られると緊張するんだけど…」

臣くんは照れたようにこっちを睨んできた。

「いやぁ、井闥山ってスポーツが盛んな高校って聞いてたからさ!あと、海外とかの交流とかも盛んなんでしょ?」
「まぁ、そうだね。」
「私英語全然出来ないから凄いなぁ〜」
「あなたの名字さん全然出来なさそうだなぁ。」
「なんだって!…………ふふっ、初対面の人にでもバレちゃうって私凄くやばいのかもしれない。」

 私は真剣な顔をしてブツブツと唱えていると、隣の方からクスクスと笑う声が聞こえた。
臣くんはうでを口の方に持っていき笑っていた。
やっぱり見かけによらずいい人なのかなと確信した。
「シミ、取れましたよ。」

数分した後に臣くんがワイシャツを手渡してきた。
そこにはシミなんてなかったようなワイシャツだった。
私は目を輝かせてとびきりの笑顔をみせた。

「臣くん凄いねぇ…シミなかったみたいだよ!」
「いえ、こちらこそ。」

よく分からずに感謝されたが、まぁ、ハンカチを拾ったことに対しての感謝かなと思い、流した。

「そういえば、このジャージどうしよう。」

私は借りたジャージを返そうとチャックを下ろし始めた。

「借りてて大丈夫ですよ。まだシャツ濡れてると思うので。」

と言われ、チャックを下ろす手を止めた。仮にでも臣くんは話しやすいからと言っても男である。その事を忘れていた私は一気に顔が赤くなるのを感じた。それを誤魔化すかのように、

「そ、それじゃぁ!洗って返すから、LINEでも交換しませんか?」
「いいよ。」

そう言うと臣くんはポケットからスマホを取り出した。
私はガラケーを持ったことがなく、とりあえずLINEはできるけど、メールがどうしても苦手なため、臣くんがガラケーじゃなくて安心した。

「…K???」
「そう、俺の名字。」
「イニシャルね!かっこいいね」
「あなたの名字さんはそのまま名前なんだね」
「友達にわかんないからこっちにして!って前に言われてから。」

「それじゃぁ、洗濯していい時に返しに行くね」
「そんなに急いでないから、都合のいい時によろしく」
「了解した!」

 そう臣くんと話した後にありがとうともう1度いい、2人は公園で別れた。
臣くんは走りながら帰るとのことで、といい上にウィンドブレーカーを着て反対方向へ走っていった。

「かっこよかったなぁ…」

とポソりと呟くとスマホが鳴り出した。画面を見ると同い年の方の幼馴染からの電話であった。すぐさま出ると



『あなた。今どこ?俺たちよりも最初に帰えって夕飯の支度するって言ってなかったっけ?』
「ごめんじゃん!色々買い出ししてたら色々あって今から電車乗るから!」
『…迎えに行くから、最寄りでいいの?』
「うん!ありがとう研磨」
『………それじゃ。』


それだけ言うと電話は途切れてしまった。
まぁ、いつも通りだからしょうがないか。。



 またいつか会いたいな。いや、ジャージ返すから会わなきゃいけないんだけどね。



1人でボケて1人でツッコミながら駅へと足を進めた。

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