第101話

第九十五話
194
2025/01/20 23:22 更新
あなた
…え?
虎杖悠仁
受け取ってくれますか?
箱の中に入っているきらきらした小さなリング。


悠仁とリングを交互に見ながら、沈黙を続けていた。


なんで、今、なんて
虎杖悠仁
今すぐ、とは言わない。俺が大学卒業してからでも、あなたの家族問題が全部終わってからでもいいから
ふわっと夜の風が全身を突き刺したが全く気にならない。


悠仁に真っ直ぐ見つめられ時間が止まったような気持ちになった。
虎杖悠仁
…すぐには返事でない?
あなた
えっ、と
頭がこんがらがって思考が止まってしまった。


けっこん、結婚。


いま、なんて言われた?
虎杖悠仁
返事、次帰って来たときでもいいから。前向きに考えてくれねえかな
左手を掴んで薬指を撫でられて、暖かい悠仁の手に全身の寒さを思い出した。
虎杖悠仁
……なんでまた、泣いてんの
あなた
泣いてない
虎杖悠仁
泣いてんじゃん。あーほら、ほっぺた乾いちゃうよ
頬の冷たい筋を風が撫でる。


泣いてないもん。


泣いてない。


悠仁がハンカチで拭ってくれたけど、止まるどころかもっと出てきてしまった。
虎杖悠仁
…寒い?
あなた
寒い
虎杖悠仁
気温下がってきたもんな。そろそろ帰るか
あなた
やだ
虎杖悠仁
ん。風邪引いたらフライトにも影響でるし、帰ろうな
あなた
やだって
虎杖悠仁
9年前とおんなじこと言ってる
あなた
うん、おんなじ
虎杖悠仁
これは同じ台詞だからOKって意味なのか、はたまたシチュが同じだからフラれるのかどっち?
シチュ、ああそうか。


付き合ったときはお墓の真ん前だったっけ。


今思えばお墓で告白って結構斬新だよね。


おじいさまのお墓の前でさあ。
ねえ。
あなた
……私、すぐアメリカ帰るよ?
虎杖悠仁
うん
あなた
卒業まで、何年もあるし。そのまま向かうで就職するかもよ?
虎杖悠仁
それはちょっと寂しいかも
あなた
うん
だよね。


寂しいよね、私も寂しいもん。


ごめんね。
虎杖悠仁
だからあなたにあんま会えねえじゃん
あなた
うん
虎杖悠仁
他の奴とどこまで仲良いとか、いつどこに行ったとかわかんねえじゃん?
あなた
それは知らなくてもいい
虎杖悠仁
俺嫉妬深いの。あなたのこと部屋に閉じ込めときたいくらいには好き。知らなかった?
あなた
うーん、ちょっとそれはやだなぁ
虎杖悠仁
でも結婚したら今より俺、安心できる。真面目なあなたのことだから別れたくても結婚しちゃえば絶対別れないだろうし
あなた
結婚しなくてももう別れられないよ
虎杖悠仁
うん。だから、結婚したらもっと離れられなくなんじゃん?
あなた
平行線だなぁ
話が平行線のまま進まない。


私は悠仁のこと大好きだし、別れたくない。


だけど私はすぐどっか行っちゃうわけで、悠仁に迷惑かけっぱなしな訳で。


だから何が言いたいかと言うと、結婚に反対ってこと。


私、悠仁のことそこまで縛る権利ないよ。


悠仁が私のこと縛りたいのは分かるけど、私はもう縛られてるからさ。


結婚、できないよ。


悠仁と結婚する資格ないもん。


それじゃ悠仁が別れたくても簡単に別れられなくなるよ。


でも、この私の否定は悠仁に何回も破られてる。
虎杖悠仁
あなたのこともっと縛りたい。結婚してください
あなた
……できないって
虎杖悠仁
じゃあ婚約して。タイミングはいつでもいいから、籍入れたい
あなた
悠仁、絶対後悔するから
虎杖悠仁
しない、絶対幸せにするから
あなた
私が悠仁のこと幸せにできないって言ってる。付き合ってる期間が長いって言っても、ほとんど離ればなれじゃん
虎杖悠仁
あなたが一緒にいてくれるだけでいい。離れてる期間は、その前とこの後で埋まるよ
あなた
うん、でも
虎杖悠仁
この言い方じゃなかなか素直になれんみたいだから、言い方変えるな
ああほら。


もっとちゃんと言わないから。


だらだら付き合うから、悠仁に迷惑かけてるんじゃん。
話ながらぼやけてくる景色を眺めていたけど、悠仁はずっとこっちをみてくれていた。
握られていた左手に冷たいものが触れる。
虎杖悠仁
結婚する。俺は、あなたと結婚する
あなた
ッ……。…やだよ、それじゃ悠仁と別れるときもっとしんどくなるじゃん
虎杖悠仁
さっきからなんで別れる前提で話してんだよ。別れないし、結婚すんの
真っ暗な中でキラキラ光ってる指輪。


リングの部分には私があげたブレスレットと同じ三つ編み模様が刻印されている。
虎杖悠仁
そろそろ素直になって
あなた
……うん
虎杖悠仁
じゃあ、台詞が同じって思っていい?
あなた
うん
虎杖悠仁
これ、後で外そうとしても外せんよ?
あなた
……悠仁の指輪も、外せないよ
虎杖悠仁
外さんよ。ほら、こっちの指輪、あなたが着けて
ポケットからもうひとつの指輪を取り出した悠仁。


私のよりも大きいから、悠仁のだと思う。
あなた
っ……
虎杖悠仁
ん、あなたの手冷たい
あなた
うるさいなぁ。寒いから仕方ないじゃんか
虎杖悠仁
へへ、ほっぺ赤い
あなた
悠仁も真っ赤っか
虎杖悠仁
……久しぶりにキスしていい?
あなた
殺す気か。今唇カピカピたがらくっついちゃうよ
虎杖悠仁
俺的にはずっとくっついててもいいんだけどな

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