スタッフside
夜のテレビ局は、昼とは別の場所みたいに静かだった。
スタジオの明かりもいくつか消えていて、
廊下には片付けを終えたスタッフがぽつぽつ歩いているだけ。
「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様です」
そんな声が遠くで聞こえる。
収録を終えたスタッフの一人が、機材ケースを引きながら外へ出た。
自動ドアが開く。
夜風が流れ込んできた。
「さむ……」
思わず肩をすくめる。
駐車場にはもうほとんど車が残っていない。
照明に照らされたアスファルトが、白く浮かび上がっていた。
スタッフは車へ向かって歩き出す。
そのとき。
視界の端に、何かが見えた。
地面に、人影のようなもの。
「……ん?」
最初は誰かが座っているのかと思った。
スタッフか、出演者か。
疲れて座り込んでいるのかもしれない。
でも。
少し近づくと、様子がおかしいことに気づく。
「……あれ?」
座っているんじゃない。
倒れている。
慌てて駆け寄る。
「ちょっと、大丈夫ですか!?」
声をかけながら肩に手を触れる。
その瞬間。
顔が見えた。
「……え」
ライトに照らされた顔。
見覚えがある。
さっきまで収録していた出演者。
「タクヤさん……!?」
思わず声が上ずる。
タクヤは地面に横たわったまま動かない。
呼吸はしている。
でも浅い。
額には汗がにじんでいた。
スタッフは急いでしゃがみ込む。
「タクヤさん!!!聞こえますか!!!」
肩を軽く揺らす。
反応はない。
指先が少し冷たい。
でも、首元に触れた瞬間、スタッフは驚いた。
「……熱っ」
異常な熱。
明らかに普通じゃない。
顔も赤くなっている。
「やばい……」
慌ててスマホを取り出す。
手が少し震えていた。
マネージャーの連絡先を思い出しながら電話をかける。
数秒後。
「はい?」
電話がつながる。
「すみません!今駐車場にいるんですけど、タクヤさんが……!」
言葉がうまく出てこない。
「倒れてて……意識がなくて……!」
電話の向こうが一瞬静かになる。
「……え?」
マネージャーの声が低くなる。
スタッフはもう一度タクヤを見る。
ライトの下で、タクヤはまだ動かない。
さっきまで笑っていた人が、
こんな静かな場所で倒れている。
信じられない。
「高熱あります……かなり……」
そのとき。
タクヤの指が、ほんの少し動いた。
「……っ」
かすかな声。
呼吸が少し荒くなる。
でも、目は開かない。
スタッフは思わずもう一度呼ぶ。
「タクヤさん、大丈夫です。今マネージャー呼んでます」
そう言いながら、背中を支える。
夜風が少し強く吹く。
駐車場のライトの下で、
タクヤはぐったりとスタッフにもたれたまま、
小さく息を吐いた。
まるで、
今までずっと無理をしていたものが
一気にほどけてしまったみたいに。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。