その日もラギーは教室の1番後ろを陣取っていた。
しかし眠るためではない。
今日は目的がある。
ラギーは対象人物がやってくるのを、岩陰に隠れて待つハイエナのように、今か今かと待っていた。
ーー来た。
何気ない会話をして、対象人物ーーあなたは教室の中央あたりの席についた。
横には先日同様、シルバー。
そして反対側にはカリムが座った。
ニヤリと笑い、目的を果たせそうな予感に胸を躍らせた。
ラギーにとってそれはほんの興味本位だった。
あの時…大食堂で感じた違和感を、ただ知りたかったのだ。
まだ休み時間ということもあって、3人は楽しそうに会話をしている。
ラギーは誰にも聞こえないほど小さな声で、けれど楽しそうに呟いた。
ラギーが詠唱し自身の体を横にずらした瞬間、あなたの体が同じように移動した。
隣に座っていたシルバーに肩がぶつかると、あなたは驚いたようにシルバーを見上げた。
あなたは少し気まずそうにシルバーに謝ると素早く元の場所に座り直した。
少ししてからラギーはもう一度詠唱して、今度は反対側に体を移動させる。
カリムから離れようとしても体が言うことを聞かない。
見上げればすぐ近くにカリムの顔がある。
あなたは恥ずかしそうに下を向いた。
そしてラギーがユニーク魔法を解いた途端に、急いでカリムから離れた。
授業が終わるとチャイムが鳴り、次の場所に移動しようと教室を出た。
ラギーはその後ろを、少し距離をあけてついていく。
偶然外廊下で出会ったマレウスに駆け寄るあなたを見て、ラギーはシシッと笑った。
再びあなたの体が意図せずに揺れた。
ぶつかってきたあなたを、マレウスはゆったりとした動作で支えて引き寄せた。
あなたはパッと顔を上げた。
心配そうに覗き込むマレウスの顔がすぐ側にあった。
マレウスの長い髪の毛が肩から滑り落ちて、あなたの額に触れる。
息が触れるほど近くにいるのに、2人はそのまま会話を続けていた。
まるでその距離が当たり前であるように。
予想通りの結果に、ラギーは面白いものを見つけたと昂る気持ちを抑えてシシッと笑った。
※
冒頭にある「ラギーが違和感を感じた“あの時”」とは15話のことです。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。