土砂降りの雨の中、一人の男が傘をささずに歩いていた。深夜、雨に濡れながらも真っ直ぐ前へ進んでいく男は、目的の人物を見つる。ぐっと口を閉じてから、お道化た様な笑いを作った。
自身と同じく傘をささずに歩いている男に近付く。濡れた手で、“全く濡れていない”相手の肩を叩いた。
にこやかな笑顔を浮かべる男_______太宰とは反対に、中原は眉を寄せ心底嫌そうな貌をした。
そんな中原を見て満足気に太宰は、中原の手を取っり上目遣いをする。
中原は思考する。今この状況の最適解を見出す為に疲れ果てている脳をフル回転させていた。
先ず普通に断った場合、明らかに嫌がらせされるだろう。断られた事の腹いせに俺の愛車や葡萄酒が幾ら犠牲に成るだろうか。考えただけで腹が立つ。
それにここで断ったとしてもあの手この手で結局は泊まらす羽目になるのだろう。ならば、此処は素直に泊めた方が良い。家の中で何をされるか分かったもんじゃないが、そこは自身が目を光らせて置けば最悪な事にはならない筈だ。
ぎらりと感情の読めない微笑を浮かべているほ放浪者を睨み上げ、大きな溜息をつく。
さて、何故こんな事になったのか
時は数時間前に遡る_______
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。