『ようやく一区切り付いたんです…今回も許してくれますよね。』
『私は機械じゃないんですよ、"語り部"を役割としているだけの…れっきとした生命です。』
『たくさん話したくなる事だってあるんです、心の中っていうのは大抵うるさいものでしょう?』
地面の砂を掴んで投げては星のように舞い落ちる様を眺めていたら、エモルが私の顔を覗き込んで言ってきた。
今回は"前回"と違ってちゃんとした休憩時間だから、「仕事を放棄するな」とかは言わないでくれる。
これだけでも結構ありがたい。
基本無表情で時々悲しい顔をするだけだけど、エモルはすごく優しいんだっていうのを私は知っている。
あぁ、これは面と向かって触れ合う中で分かった、"体験"ね。
勝手に頭に入る"知識"じゃなくて。
こういう事も表情を動かさずに言えるのは、モテる男の条件だったりするのかな。
私達に性別は無いも同然だし、恋愛は概念として知ってるだけであり得ないんだけど。
私は"物語を作る事"を強要されているけど、エモルは"世界を安定させる事"を強要されている。
干渉出来る時なんて殆ど無い。
世界はこんなにも幻想的なのに、それが人には伝わらない。
伝わったら…神の助けがいつでも与えられてしまったら、物語になる筈無いからね。
"物語"に囚われた私達は、こうやって過ごすしか無いの。
ん…言う事間違えた、もっと素直に褒めるつもりだったのに。
さて、エモルは悲しい顔になってきた訳だけど…どうしようか。
考えるより先に注意されてしまった。
確かに「申し訳ない」って表情になった自覚はあったけど、察するのが早過ぎる。
言いたい事の三倍は察されている気がする。
今の一言は、どれくらいの事に対しての台詞なんだろう。
なんで否定するんだろうか、こんなに複雑な私の感情を完璧に読み取れているのに。
この力が嫌だって事なら、全力で同意するけど…多分そんな事じゃない。
"こんな事出来ても誰も助けられない"って事だ。
"この物語"は悲劇を描いている。
少なくとも私はそう解釈して語ってる。
どんなに力を持っていても、それで救えるのは人間の中でもごく僅か。
そんな状況じゃ、力を嫌悪するのも当たり前だろうね。
私の反省会に付き合うってだけだったから、エモルはもう行ってしまった。
"ここ"はそんなに広くないから、追いかければすぐ捕まえられるけどそうはしない。
私も、独り言を言いたくなる時はある。
この世界の真理、何度も自分で繰り返し言ってきた事に疑問をぶつけてみる。
なんか馬鹿みたいな事をしているな、私は。
一人で虚空に質問して、一人で勝手に答えてる。
これが馬鹿じゃなかったらなんだろう。
まぁでも、一人だから大丈夫。
そう、それだけで良い。
それだけでも、私は私であり続けられる。
物語に区切りを付けるには宣言が必要、これをやって初めて私は、本当の意味で休憩が出来る。
〚第1部 「人と機械の境界線」完〛
『 』に続く
『それでは、しばし休息といきましょう。』
『私も、貴方も…。』













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。