鬼の気配を追って歩いていると、気配の先にある建物があった。
それを見た瞬間、覚えのある気配と景色が1つに繋がって鮮明に思い出した。
童磨の気配だと気づけなかったことに悔しさを抱きつつ、鬼がいることを再認識して家族と過ごす街に入れないようにすることを決意した。
このとき、童磨の気配に気を取られて近くの街にいた琴葉の気配に気づくことができなかった。
これには琴葉が男と姑から暴力を受けて気配が薄くなっていたことも重なっていた。
日没前に家に戻り、それから毎日童磨の動向を探った。
本来ならば琴葉を探さなければならなかったが、万世極楽教が街に近いことから童磨の動向を探っていた。
1年と数ヶ月たってようやく動きがあった。
それは、赤子を抱えた女子が建物に駆け込んできたことだ。
童磨の信者が扉を開けて女子を引き入れてから気づいた。
琴葉を見つけることができた点は好機ではあるが、童磨の場所へ行ってしまったという点は悪機だ。
その日は家に戻り、両親に琴葉の場所は分かったが容易に手出しができないことを伝えた。
私は次の満月まで童磨と琴葉のいる街で過ごし、気配を消して山で見張っていた。
様子を見始めて数週間ほど経つと、童磨の気配が建物から動き出したことに気づいた。
しばらく気配に集中していると、童磨は女子と赤子の2人を追いかけていた。
その女子と赤子が誰なのか、すぐに気配でわかった。
童磨の追いかける対象が琴葉であることに気づき、私は全速力で気配を追いかけた。
愛しい妹は童磨の手から絶対に守る!
あと少しで追いつくとき、琴葉は赤子を崖から落とした。
間一髪赤子を左腕で抱えると崖を駆け上がり、片手で童磨の攻撃を弾きつつ琴葉の前に立った。
だが、私が到着する前に攻撃が既に琴葉に当たっていた。
琴葉を助けたい一心で思わず琴葉の前に立ったが、後から思えば念の為に付けていたお面がなければ顔が黒死牟と似ていると疑われていたかもしれなかった。
童磨を警戒しつつ琴葉の様子を伺ったとき、見えた琴葉の身体がとても弱くなっていることに驚愕した。
私は鬼と遭遇することを考えていなかったため、護身として木刀しか持ってきていなかった。
木刀は鬼を滅せないが、鬼をその場に留めることはできる。
童磨が私を舐め腐っている中、一瞬で接近して両腕を斬り落とした。
私は童磨を琴葉と別の方へ蹴り飛ばした。
情報が共有されることを恐れて型は使わなかった、耐え続けた。
既に童磨の血気術を知っていることもあり、童磨を圧倒したまま夜明けを迎えた。
琵琶の音と共に童磨が消えるのを見届けると、琴葉に駆け寄った。
琴葉は緊張していたのか、私に抱き着いて泣いた。
私は琴葉を優しく抱きしめ、背負って両親の待つ家に戻った。
家への帰り道、琴葉は駆け落ちしてからどうなったかを話してくれた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。