机の上に 昨日買った 度数の高いお酒を並べていく
お酒は体が冷えやすくなるらしい。
…飲み会とか、ちゃんと行ったら 楽しかったかな。
でももう 私1人の時間。
開けられた瓶や缶に口をつけ 体に流し込む。
口の中に残る苦味が丁度良かった。
並べられたお酒は 少し残してしまったけれど、もういいか。
満足して 浴室に向かう。
服を着たまま シャワーを浴びた。
お湯になるまで待たなかったから 案の定寒い。
そのまま 床が濡れるのも気にせず 廊下を歩いて ベランダに出る。
はらはら、と落ちてきた 白い物体。
ほんとに降った、と空を見上げる。綺麗だ。
ベランダにぽつん、と置かれたイスに腰掛ける。
もう既に 指が痺れ始めた。
寒いなぁ、今暖房つけたら それはそれで素晴らしいんだろうけど。
もう私には 生きる理由はないから。
どこかの夢みたいに、誤解を解いて、みんな仲良くなる。なんてハッピーエンドなんか見せてやらない。
泥みたいに汚い終わりがきっと似合うのだろう。
誤解で人を殺した最低なお前らと、全て投げ出して一人で死んだ哀れで最悪な私と、みんなで地獄を歩こう。
既に体は硬直して動かなくなってきた。ベランダに出てどれくらいの時間が経っただろう。
思考だけが、ゆっくり動く。
瞼が重い。
でも もう限界だろうな。
ああは思ったけれど、地獄を歩くのは、もっと先でいい。
願わくば この世界では、多くの幸せが私の愛しい人達に降り注ぎますように。
剣持side
翌朝 8時を少し過ぎた頃。
「連絡が取れない。自殺を考えていたから心配だ。」
という旨で警察に電話をした。
昨日教えられた住所を伝えると 数十分後には あなたの下の名前の家の扉が 警察や管理人によって開かれ、中から既に冷たくなったあなたの下の名前が発見された。
確認を促され見た顔は 紛れもないあなたの下の名前で、いやでも事実を受け入れるしか無いことを悟った。
顔は本人の希望通り綺麗なままで、肌も唇も白く、表情は穏やかだったと思う。
運ばれていくあなたの下の名前を見届けて、警察に連絡先を伝えて…。
自分のスマホを握りしめて 事務所へ向かった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!