翌日、昼休みの教室には昨日とは真反対の穏やかな空気が流れていた。
私は、葛葉さんに借りていた参考書を返そうと声をかけた。
葛葉さんは少し気だるげに、でもぶっきらぼうな優しさを滲ませて参考書を受け取る。
彼とは図書委員の仕事を通じて、いつの間にか普通に話すようになったけれど、クラスの女子からは「あの葛葉くんと話せるなんて」と羨ましがられることも多い。
少しだけ顔を近づけて、ページをパラパラと捲る葛葉さん。
その距離がほんの少し縮まった、その時。
背後から柔らかい声がした。
振り返ると、そこにはいつもの穏やかな笑みを浮かべた叶くんが立っていた。
叶くんは葛葉さんの隣に自然に割り込むと、私の肩に付き合っている人なら当たり前のような、けれど少しだけ“近すぎる”距離で手を置いた。
私たちが付き合っていることが誰かに知られたらかなり不味いもん。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!