僕は初めてあなたの歌声の魔法を目の当たりにした。そしてその美しさと素晴らしさに目を奪われた。
けれどあなたの話では、月の光がないとこの魔法は使えないと言っていた。今夜は新月なのに、どうして使えたのだろう。
しかも側にはマルフォイがいて、あなたの手をしっかりと握っていた。今夜は新月にも関わらずあなたが魔女の姿でいられるのも、マルフォイが側にいるからだと知った。僕は2人の間に特別な何かがあるように感じた。
壇上でのスピーチを終え、あなたが僕の所に帰ってきた。僕はあなたがさっきよりもっと美しさを増している気がした。
僕は側に来たあなたの腰に手を回して、しっかりと抱き寄せた。あなたは少し驚いているようだった。
あなたが恥ずかしそうに笑った。
音楽が始まり、僕たちはぎこちなく踊り始めた。あなたがチラッと目線を移した。その先に目をやると、パーキンソンと踊っているマルフォイの姿が見えた。僕はそれに気付いていないフリをした。
何曲か踊り、僕はあなたを椅子に座らせ飲み物を取りに行った。そしてあなたの元へ向かうと、あなたの周りには人だかりができていた。
多くの男子生徒に囲まれ、あなたは困った顔をしていた。
僕は人だかりに叫んだが、声が届かなかった。
その時だった。
マルフォイがあなたと男子生徒の間に立って言った。
マルフォイがそう言うと、今度はその人だかりが僕の方へ押し寄せて来た。
僕はみんなに囲まれて、動けなくなった。
しまった。
きっと今の間にマルフォイはあなたを連れて行ってしまったに違いない。
僕は慌てて人だかりを抜けた。
しかし僕の予想に反し、そこにマルフォイの姿はなくあなたは今度は女子生徒に囲まれていた。
あなたは困った顔をしていたが、男子生徒に囲まれている時より嬉しそうに見えた。
僕はそう言って、あなたの手を引いて、そこから連れ出した。
「やっぱり噂は本当なんだ!」と騒いでいる女の子達の声が後ろから聞こえてきた。
僕は正直マルフォイの行動に驚いた。以前の彼ならきっと今の間にあなたを連れ去っていたはずだ。
このマルフォイの変化に、僕はあなたと彼の間の特別な何かを感じずにはいられなかった。
僕はあなたを人の少ない大広間の隅まで連れて来た。
僕たちの頭上にはヤドリギが飾られていた。
僕はあなたの言葉を遮るように言った。そしてあなたの目を見つめた。
僕はあなたの肩に手を置いた。
あなたが動揺したように目を見開いた。そしてしばらく黙っていたが、口を開いた。
僕はあなたが何か言う前に口を挟んだ。
あなたが驚いた顔で口をつぐんだ。
僕はあなたの顔を両手で包み込んだ。そしてゆっくり顔を近づけた。
あなたは全身に力を入れ、目をぎゅっと閉じた。
僕はあなたの頬に優しくキスをした。
あなたが哀しげに僕を見た。
その後ろの方にマルフォイの姿が見えた。
僕がそう言うと、マルフォイが声をかけてきた。
僕がそう言うと、あなたは微笑んで言った。
僕はパートナーを代えて踊る気にはなれなかった。
あなたとマルフォイを残し、僕は大広間を後にした。






















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!