怪訝そうにこちらを見てくる彼の表情に
戸惑いで、思わず口を開いた。
"さすがにその冗談は面白くないですよ〜ㅎㅎ"
気まずく冷ややかな雰囲気をそう言って笑い飛ばした。
久しぶりに会ったら冗談を吹っかけてくるなんて
すごい変わりよう………
その時の私はそのくらいに思っていた。
けれど、ユンギさんは表情ひとつ変えなかった。
え。
信じたくない。
自分勝手な感情が先走りして、冷静な判断ができない。
でも、徐々にそれは本当のことなのだと嫌でも分かった。
私を見る目がどこまでも冷酷だったから。
あの頃の暖かさを帯びた目は、もう面影もない。
静かに私を降ろした彼は呆れた顔でこちらを見てくる。
違う。私は、見間違えてなんかない。
忘れられたのは、私________
そう言いたいのに、こぼれたのは言葉ではなく涙。
叫び出したい訳でもないのに
"忘れられた"
1つの事実は、私をたしかに苦しめた。
私を情緒不安定な人とでも見なしたのか
怪訝そうな表情は変えないまま口を開いた。
ああそっか。ユンギさんにはすぐ分かるんだ。
"自分が吐いた嘘で、ここに来たんですよ"
"ユンギさんに酷いことたくさん言ったんです"
"自業自得なんです"
言いたいことはたくさんあった。
けれど、私は決して口に出さず喉の奥に飲み込んだ。
"この監獄に"
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。