〘 fw side 〙
嫌な予感がしてた。
あの日、あなたちゃんと
一旦離れようと思ったのは自分や。
あいつも多分、それを望んでた。
でも、全然だめだった。
廊下ですれ違いそうになれば、気になるし。
広間にいなかったら不安になる。
我ながら笑える。
こんな中途半端な気持ちになるなんて。
────夕方
広間に行くと、ロレとイブがいた。
葛葉は仕事でいないとか。
何気なく聞く。
別に会って話すわけでもないのに、
何となく気になってしまった。
胸騒ぎがしてならない。
ロレもイブも特に気にしていなかった。
俺もその時はそう思った。
部屋にいるだけやろって。
嫌な汗が背中を伝う。
自分でも分かるほど、声が震えてた。
部屋にもいない。
庭園にも、広間にも。
屋敷中探してもいなかった。
初めて大声で名前を呼んだ。
返事はない。
静かな屋敷に、俺の声だけ響く。
心臓が嫌な音を立てていた。
振り返った先には葛葉。
表情が焦ってるときのやつだった。
映像が映し出される。
人気のない細い道。
歩くあなた。
その後ろから現れる人影。
そして彼女は────連れ去られた。
部屋の空気が凍る。
誰も喋らへん、喋れんかった。
俺も何も言えなかった。
葛葉が呟く。
めちゃくちゃ怒ってる。
殺気が滲み出ている。
いつも通り、任務と同じ。
ボスの葛葉は指示を飛ばす。
でも、いつもとは違うような
そんな緊張感があった。
二人は即座に動き出す。
でも、俺だけ動けへん。
映像を見続ける。
何度も、何度も、何度も。
胸が締め付けられる。
あの時、俺はちゃんとあいつの顔を見たっけ?
いや、見てない。
怖くて見れへんかった。
机を思いっきり殴った。
鈍い音が響く。
もっと早く気づいていれば……
意味のない後悔が、頭を支配する。
あなたちゃんは今どうしているだろうか。
自分に心底腹が立つ。
葛葉の声に、ハッと顔をあげる。
短い言葉。
それだけで頭が一気に冷える。
そうや、後悔してる暇なんてない。
あなたちゃんは今一人なんだから。
絶対に助け出す。
あの無邪気な笑顔が
もう一度みたい。
そして今度こそ、ちゃんと話したい。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。