女性の方が電話越しの誰かにキレている。
この二次試験の結果について協会と揉めているのだろう。
メンチ
「とにかくあたしの結論は変わらないわ!」
「二次試験後半の料理審査、合格者は0!!よ。」
その言葉に受験者全員がざわつき始める。
ドゴォォォン!
何の音かと見てみると、255番の男性が調理台を殴り破壊したようだ。
名前なんだっけ、えーっと…、
あ!トードーさんだ!レスラーの!
トードー
「納得いかねェな。
とてもハイそうですかと帰る気にはならねェな。」
「オレが目指しているのはコックでもグルメでもねェ!!
ハンターだ!!しかも賞金首ハンター志望だぜ!!
美食ハンターごときに合否を決められたくねーな!!」
メンチ
「それは残念だったわね。」
トードー
「何ィ!?」
メンチ
「今回の試験では試験官運がなかったってことよ。
また来年がんばれば────?」
激煽るやんけ。
レスラー
「こ…、」
「ふざけんじゃねェ───!」
激昂して殴りかかろうとする。
どうせ返り討ちにされるだろうし静止はしないが。
でも試験官の女性は刃物持ってるしトードーさんの方が危ないから止めた方がいいのか…?
パァン!
平手打ちをされ、建物外へと吹っ飛んでいく。
しかし、返り討ちにしたのは予想に反して男性の方だった。
メンチ
「ブハラ、よけいなマネしないでよ。」
ブハラ
「だってさ───、
オレが手ェ出さなきゃメンチあいつを殺ってたろ?」
メンチ
「ふん、まーね。」
隠し持っていた鉈を回し、立ち上がったかと思うと、
ホイホイとそれを投げて曲芸のようなことをし始めた。
メンチ
「賞金首ハンター?笑わせるわ!!
たかが美食ハンターごときに一撃でのされちゃって。
どのハンターを目指すとか関係ないのよ。
ハンターたるもの武術の心得があって当然!!」
パシッ!
投げていた鉈を全てキャッチ。お見事。
メンチ
「あたしらも食材探して猛獣の巣の中に入ることだって珍し
くないし密猟者を見つければもちろん戦って捕らえる
わ!!」
「武芸なんてハンターやってたらいやでも身につくのよ。
あたしが知りたいのは未知のものに挑戦する気概なの
よ!!」
???
「それにしても合格者0はちとキビしすぎやせんか?」
空からアナウンスのようなものが聞こえた。
見上げるとそこにはハンター協会のマークのついた飛行船が。
ドォン!!
飛行船からお爺さんが飛び降り、私達の前に着地する。
全員何者なのかと疑問を抱いている。
メンチ
「審査委員会のネテロ会長。
ハンター試験の最高責任者よ。」
受験生一同
「!!」
ネテロ
「ま、責任者といってもしょせん裏方。
こんなときのトラブル処理係みたいなもんじゃ。」
「メンチくん。」
メンチ
「はい!」
どんなことに対しても強気だったメンチさんが緊張している。
ネテロ
「未知のものに挑戦する気概を彼らに問うた結果、
全員その態度に問題あり。
つまり不合格と思ったわけかね?」
メンチ
「………いえ。」
「テスト生に料理を軽んじる発言をされてついカッとなり、
その際料理の作り方がテスト生全員に知られてしまうトラ
ブルがかさなりまして、頭に血が昇っているうちに腹がい
っぱいにですね…。」
ネテロ
「つまり自分でも審査不十分だとわかっとるわけだな?」
メンチ
「………はい。」
「スイマセン!料理のことになると我を忘れるんです。
審査員失格ですね。」
「私は審査員を降りますので試験は無効にして下さい。」
ネテロ
「ふむ…、審査を続行しようにも選んだメニューの難度が
少々高かったようじゃな。」
「よし!ではこうしよう。
審査員は続行してもらう。」
「その代わり新しいテストには審査員の君にも実演という形
で参加してもらう。」
「──というのでいかがかな。」
実践形式!それならお手本がある!
ネテロ
「その方がテスト生も合否に納得がいきやすいじゃろ。」
メンチ
「そうですね。それじゃ…」
「ゆで卵。」
ゆで卵?いきなり難易度下がったな。
メンチ
「会長、私達をあの山まで連れていってくれませんか。」
その言葉に会長はニヤリとわらう。
ネテロ
「もちろんいいとも。」
飛行船に乗れるの?やった!乗ってみたかったから嬉しい!
メンチ
「着いたわよ。」
指をさした方には崖があった。下がどうなっているのかなんてわからないくらい深い崖だった。
メンチ
「安心して。下は深ーい河よ。
流れが早いから落ちたら数十km先の海までノンストップ
だけど。」
「それじゃお先に。」
履いていたブーツを脱ぐとすぐさま崖にダイブする。
ネテロ
「マフタツ山に生息するクモワシ。
その卵をとりに行ったのじゃよ。」
「クモワシは陸の獣から卵を守るため谷の間に丈夫な糸を張
り卵をつるしておく。」
「その糸にうまくつかまり、1つだけ卵をとり、岩壁をよじ
登って戻ってくる。」
結局お手本見えないんかーい。
でもさっきのより断然楽勝!
メンチ
「よっと。この卵でゆで卵を作るのよ。」
キルア
「あ──よかった。」
ゴン
「こーゆーのを待ってたんだよね。」
あなた
「わかる!シンプルなやつ!」
レオリオ
「走るのやら民族料理よりよっぽど早くてわかりやすいぜ。」
「よっしゃ行くぜ!」
「そりゃあ───!!」
私達5人を始めとし、受験生も続く。
卵を持って戻ってくると、用意されていた道具で調理を始める。
メンチ
「こっちが市販の卵でこっちがクモワシの卵。
さぁ比べてみて。」
市販の方はもちろん馴染みのある、美味しいけれど至って普通の味。
クモワシの方はそれより断然濃厚。
比べるのが市販の卵に申し訳ないくらいのおいしさだった。
メンチ
「おいしいものを発見した時の喜び!
少しは味わってもらえたかしら。
ここちとらこれに命かけてんのよね。」
さっきまでメンチさんに苛立っていたトードーさんもゴン君に卵を分けてもらうと敗北を認めたのか、
トードー
「……今年は完敗だ。
来年また来るぜ。」
と言っていた。
メンチさんもこれには満足そうだ。
第二次試験後半、メンチの料理。
合格者43名。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!