第16話

Episode.15
45
2026/07/30 04:16 更新
数日後、あなたの下の名前は友達とご飯を食べているときに
黒尾のことを相談した
友達
…それもう絶対好きじゃん
カフェで話を聞き終えた友達が、即答した


あなたの下の名前は思わず顔をしかめる
あなた
いや、好きなのは黒尾くんでしょ
友達
違う違う、あなたの下の名前が
あなた
え?
友達
だってそんな悩む?
テーブルの上のアイスティーをいじりながら、あなたの下の名前は黙る


数日前


黒尾に“好き”と言われた


付き合ってほしいわけじゃない
返事はいらない


そう言われたのに、あの日からずっと頭の中に黒尾がいる
あなた
でも相手高校生だよ?
友達
それで?
あなた
それでって…
友達は呆れたようにため息をついた
友達
ゆんりさ、“好きになっちゃダメ”って勝手に決めてない?
あなた
……
図星だった


だって黒尾は、本当にいい子だから


自分みたいな面倒な人間が近づいていい相手じゃない


そう思ってしまう
友達
あとさ
友達がにやっと笑う
友達
その子、絶対あなたの下の名前のことめちゃくちゃ大事にしてくれるじゃん
あなた
……
それは否定できなかった






その日の夜


バイト帰り、あなたの下の名前はコンビニ前で見覚えのある姿を見つけた
あなた
…黒尾くん
声をかけると、黒尾が振り返る
黒尾鉄朗
あれ、あなたの下の名前
いつも通りの顔


自然に笑って
普通に近づいてくる


その態度に、逆にあなたの下の名前の方が変に緊張してしまう
黒尾鉄朗
バイト帰り?
あなた
…うん
黒尾鉄朗
疲れてる?
あなた
まあまあ
会話がぎこちない 


いつもならもっと自然に話せるのに


“好き”と言われてから、黒尾を見るたび胸がざわつく


黒尾はそんなあなたの下の名前を見て、少しだけ苦笑した
黒尾鉄朗
…なに気にしてんのか分かんねえけど
あなたの下の名前が顔を上げる


黒尾はコンビニ袋を片手に持ちながら言った
黒尾鉄朗
あんま考えすぎんなよ
あなた
……
黒尾鉄朗
返事はいらねえって言ったし
その声は優しい


気を遣わせないようにしてるのが分かる


それが余計に苦しい


あなたの下の名前は何か言おうとして口を開く
あなた
でも、私──
すると黒尾が、少し強めに遮った
黒尾鉄朗
あ、でも
黒尾はまっすぐあなたの下の名前を見る
黒尾鉄朗
歳がどうとか、俺の未来がどうとか
黒尾鉄朗
そういうので断んのはなしな
あなた
…っ
心臓が跳ねる


見透かされた


あなたの下の名前が考えていたこと全部


黒尾は小さく息を吐く
黒尾鉄朗
あなたの下の名前ってさ、すぐそーやって“俺のため”みたいに言うけどさ
あなた
……
黒尾鉄朗
それ、いらねえ
静かな声だった


責めているわけじゃない


でも確かに刺さる
黒尾鉄朗
俺、自分で決めれる歳なんだけど
黒尾は苦笑する
黒尾鉄朗
高校生だからって勝手に線引かれんのは結構傷つく
その言葉に、あなたの下の名前は何も言えなくなった


黒尾はちゃんと男の人だった


年下だからとか
高校生だからとか


そういうので片付けられる存在じゃない


分かってしまう


だから怖い
あなた
…ごめん
小さく零すと、黒尾は少し眉を下げた
黒尾鉄朗
だから謝んなって
そして少しだけ笑う
黒尾鉄朗
別に今すぐ答え出せとは言ってねえし
あなた
…うん
黒尾鉄朗
ただ、あなたの下の名前が勝手に“ダメ”って決めつけんのは嫌
夜風が吹く


あなたの下の名前は俯いたまま、自分の鼓動を聞いていた


黒尾のことを考えると、最近どうしても落ち着かない


会いたいと思うし
声を聞くと安心する


それが何なのか、もう薄々気づき始めているのに


まだ、認めるのが怖かった。

プリ小説オーディオドラマ