数日後、あなたの下の名前は友達とご飯を食べているときに
黒尾のことを相談した
カフェで話を聞き終えた友達が、即答した
あなたの下の名前は思わず顔をしかめる
テーブルの上のアイスティーをいじりながら、あなたの下の名前は黙る
数日前
黒尾に“好き”と言われた
付き合ってほしいわけじゃない
返事はいらない
そう言われたのに、あの日からずっと頭の中に黒尾がいる
友達は呆れたようにため息をついた
図星だった
だって黒尾は、本当にいい子だから
自分みたいな面倒な人間が近づいていい相手じゃない
そう思ってしまう
友達がにやっと笑う
それは否定できなかった
*
その日の夜
バイト帰り、あなたの下の名前はコンビニ前で見覚えのある姿を見つけた
声をかけると、黒尾が振り返る
いつも通りの顔
自然に笑って
普通に近づいてくる
その態度に、逆にあなたの下の名前の方が変に緊張してしまう
会話がぎこちない
いつもならもっと自然に話せるのに
“好き”と言われてから、黒尾を見るたび胸がざわつく
黒尾はそんなあなたの下の名前を見て、少しだけ苦笑した
あなたの下の名前が顔を上げる
黒尾はコンビニ袋を片手に持ちながら言った
その声は優しい
気を遣わせないようにしてるのが分かる
それが余計に苦しい
あなたの下の名前は何か言おうとして口を開く
すると黒尾が、少し強めに遮った
黒尾はまっすぐあなたの下の名前を見る
心臓が跳ねる
見透かされた
あなたの下の名前が考えていたこと全部
黒尾は小さく息を吐く
静かな声だった
責めているわけじゃない
でも確かに刺さる
黒尾は苦笑する
その言葉に、あなたの下の名前は何も言えなくなった
黒尾はちゃんと男の人だった
年下だからとか
高校生だからとか
そういうので片付けられる存在じゃない
分かってしまう
だから怖い
小さく零すと、黒尾は少し眉を下げた
そして少しだけ笑う
夜風が吹く
あなたの下の名前は俯いたまま、自分の鼓動を聞いていた
黒尾のことを考えると、最近どうしても落ち着かない
会いたいと思うし
声を聞くと安心する
それが何なのか、もう薄々気づき始めているのに
まだ、認めるのが怖かった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!