第19話

年越し
150
2025/12/24 09:00 更新
部屋の照明を少し落とすと、
外の街灯の光がカーテン越しに滲んだ。

テレビはつけているけれど、
音量は小さくて、
画面もほとんど見ていない。

ソファに並んで座って、
湯気の立つマグカップを手にしているだけ。

それだけなのに、
今日はいつもより静かで、
特別な夜だとわかる。

「もうすぐ今年終わるね」
私が言うと、
スビンはカップを見つめたまま頷いた。

「早かった」
「うん……早かったけど、濃かった気もする」

スビンが少し考えてから、
ぽつりと言った。

「同棲、してよかった」

一瞬、言葉が止まる。

でもすぐに、
胸の奥がじんわり温かくなった。

「私も」
「最初、ちゃんとやれるか不安だった」
「わかる。喧嘩もしたしね」

ふっと笑い合う。

「でもさ」
スビンは続けた。
「一緒に帰る場所があるって、思ったより大きかった」

私はマグカップを置いて、
膝の上で手を組んだ。

「疲れてても、
スビンがいるって思うだけで、
ちょっと安心できた」

そう言うと、
スビンはゆっくりこちらを見た。

「……同じこと思ってた」

その目がまっすぐで、
少し照れたようで、
嘘じゃないとすぐわかる。

沈黙が流れる。
でも、気まずくない。

スビンが、
そっと私の指に触れた。

絡めるほどじゃない、
でも離れない距離。

「来年さ……」
「うん?」
「どうなるかわかんないけど」

一度、言葉を切る。

「今みたいに、
普通の夜を一緒に過ごせたらいい」

胸が、
ゆっくり強く鳴った。

「派手じゃなくていい」
「うん」
「喧嘩しても、
ちゃんと話して、
それで……また笑えるなら」

私は、
その手をそっと握り返した。

「それがいい」

スビンの肩の力が、
ふっと抜けたのがわかる。

「……君となら、できそうな気がする」
「気がする、じゃなくて?」
「……したい」

その言い直しが、
スビンらしくて、
思わず微笑んだ。

時計を見ると、
23時58分。

テレビから、
カウントダウンの声が聞こえてくる。

「もうすぐだね」
「うん」

0になる瞬間、
スビンは私の手を離さなかった。

「3、2、1……」

遠くで拍手と歓声。

「……あけましておめでとう」
「おめでとう」

視線が合う。

キスをするほどじゃない。
でも、距離は自然に近づいていた。

「今年もよろしく」
「こちらこそ」

そのまま、
スビンの肩にそっと頭を預ける。

静かな年越し。
でも、心は満たされていた。

来年がどうなるかは、
まだわからない。

それでも、
この人と一緒なら――
きっと、大丈夫だと思えた。
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