部屋の照明を少し落とすと、
外の街灯の光がカーテン越しに滲んだ。
テレビはつけているけれど、
音量は小さくて、
画面もほとんど見ていない。
ソファに並んで座って、
湯気の立つマグカップを手にしているだけ。
それだけなのに、
今日はいつもより静かで、
特別な夜だとわかる。
「もうすぐ今年終わるね」
私が言うと、
スビンはカップを見つめたまま頷いた。
「早かった」
「うん……早かったけど、濃かった気もする」
スビンが少し考えてから、
ぽつりと言った。
「同棲、してよかった」
一瞬、言葉が止まる。
でもすぐに、
胸の奥がじんわり温かくなった。
「私も」
「最初、ちゃんとやれるか不安だった」
「わかる。喧嘩もしたしね」
ふっと笑い合う。
「でもさ」
スビンは続けた。
「一緒に帰る場所があるって、思ったより大きかった」
私はマグカップを置いて、
膝の上で手を組んだ。
「疲れてても、
スビンがいるって思うだけで、
ちょっと安心できた」
そう言うと、
スビンはゆっくりこちらを見た。
「……同じこと思ってた」
その目がまっすぐで、
少し照れたようで、
嘘じゃないとすぐわかる。
沈黙が流れる。
でも、気まずくない。
スビンが、
そっと私の指に触れた。
絡めるほどじゃない、
でも離れない距離。
「来年さ……」
「うん?」
「どうなるかわかんないけど」
一度、言葉を切る。
「今みたいに、
普通の夜を一緒に過ごせたらいい」
胸が、
ゆっくり強く鳴った。
「派手じゃなくていい」
「うん」
「喧嘩しても、
ちゃんと話して、
それで……また笑えるなら」
私は、
その手をそっと握り返した。
「それがいい」
スビンの肩の力が、
ふっと抜けたのがわかる。
「……君となら、できそうな気がする」
「気がする、じゃなくて?」
「……したい」
その言い直しが、
スビンらしくて、
思わず微笑んだ。
時計を見ると、
23時58分。
テレビから、
カウントダウンの声が聞こえてくる。
「もうすぐだね」
「うん」
0になる瞬間、
スビンは私の手を離さなかった。
「3、2、1……」
遠くで拍手と歓声。
「……あけましておめでとう」
「おめでとう」
視線が合う。
キスをするほどじゃない。
でも、距離は自然に近づいていた。
「今年もよろしく」
「こちらこそ」
そのまま、
スビンの肩にそっと頭を預ける。
静かな年越し。
でも、心は満たされていた。
来年がどうなるかは、
まだわからない。
それでも、
この人と一緒なら――
きっと、大丈夫だと思えた。
次のお話♡10で更新します











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!