限りなく鳴り続ける電子音で、重い瞼を開けた。
細々としか開かない目をなんとか開けて、視界に入る情報を手に入れることに奔走する。
5分ほどして、やっと覚醒した脳で理解したのは、自分がどこかの病院の病室にいることだった。
まずは乾いた喉をなんとかしようと、近くにあったコップを簡易的なウォーターサーバーに置いて、風の術式を利用して水を入れた。
それをまた風で自分の元へ持ってきて、乾ききっている喉をなんとか潤した。
何度か咳払いをした後、すこし掠れながらも声を出すことに成功する。
片方の腕には点滴が繋がっており、お腹が少しだけズキズキと痛む。
枕元にあるナースコールに手を伸ばしかけて、そこで力なく腕を下ろす。
看護師を呼ぶにはまだ早い気がして、…本音を言うと、もう少しだけ眠っていたかっただけなのだけれど。
恐らく私は呪詛師を捕縛した後、多量の出血で病院へ運ばれたのだろう。刺された影響で呪力を身体に上手く巡らせることができず、呪詛師と対峙していた時は呪具を抜かれたせいで腹筋の力だけでなんとか止血してたから。
私が意識を失う直前には呪詛師も気絶していたから、きっと心結達がなんとかしてくれただろう。それにしても、悠仁には申し訳ないことをした。
目の前で死にかけて、トラウマになっていないといいが…。
そんなことを考えていると、病室の扉がノックされた。
返事をするか迷っていると、「失礼しますよー…と、」と男性の声が聞こえた。
開いた扉から顔を覗かせたのは、帽子を脱いだ猪野さんだった。
慌てて猪野さんが私の枕元に駆け寄って、ナースコールの呼び出しボタンを押す。
本当はもう少しゆっくりしたかったのだけれど、どうやらそれは無理らしい。扉の向こうからドタバタと複数人の走る音と呪力が見えた時点で、私は全てを察した。
いろんな検査を終えて、やっと病室に戻ってきた頃にはもうヘロヘロになっていた。
今回の任務、長野ということもあって景光さんは連れてこなかったのだ。
なぜかというと、勿論彼の親族が居るからということもあるのだが、手前上死んだことになっている景光さんを、彼の顔を知っている人がいるかもしれない地元に連れて行くと何が起こるか分からないからだ。
だから今回の任務は景光さんは留守番を任せていたのだけれど…、今回私が任務で負傷したことによって彼が長野に向かってきているらしい。
猪野さんから渡された自身の携帯の画面をぼうっと見つめる。
メールには同期や先生からの心配のメッセージが来ていた。
病院の先生いわく出血量がかなり多く、一時は本当に危なかったらしい。
まだ少し痛む感覚を紛らわすように猪野さんと雑談に花を咲かせていたら、途中から心結もやってきた。
心結が言うには、あの呪詛師が使用していた呪具は傷口から呪力を入りこませて、強制的に睡眠状態に陥らせる効果があるらしい。
私が刺された時もそれが発動して、呪具は壊したものの、術式効果が私が目覚めるのが遅くなった原因の一つにもなったみたいだ。
心結から「その傷が治るまで絶対安静ですからね!」とありがたいお言葉を頂いて、私は弱々しく頷いた。
猪野さんからも「橘さんはまだまだ学生なんですから、ちゃんと休まないとダメっすよ」と言われて、まだまだ自分は子どもなんだなと感じさせられる。
二人が病室を出ていくのを見送って、一息ついた…のだが、先程出ていったばかりの猪野さんが再度病室に入ってきた。
手には何かが入ったビニール袋を持っている。
猪野さんからハーゲンダッツを受け取り、彼は急ぎ足で病室を出ていった。
味はミルクとイチゴと抹茶だった。
定番の味だけれど、どれも美味しいので飽きることはない。
レジ袋にアイスを戻して棚に置いてから、段々とやってきた眠気に抗えずに私はまた眠った。
お久しぶりです。
作者です。
名探偵コナンの蘭ちゃんを演じていた山崎和佳奈さんが亡くなったということで、かなりショックを受けています。
昔から山崎さんの蘭ちゃんの声が好きで、来年の30作目の映画を楽しみにしていたのですが…その前に亡くなられてしまったことがとても悲しいです。
これからは岡村明美さんが演じられるということで、山崎さんのことは悲しいけれど、岡村さんの蘭ちゃんのお声も応援しています。
最後に、山崎和佳奈さんへ御冥福をお祈りします。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。