手元には大して大きな荷物はなく、必要最低限の物だけがベルト付きのポーチに入っている。
東京都はまた気候が違う長野は夏だと言うのに涼しい風が流れていた。
胸ポケットに入っている警察手帳の写真が黒髪の方に変わっているのを確認して、スマホで悠仁から「2人と合流した!これから窓さんに話聞いてくるね」とメッセージが来ているのを確認して、すぐにポケットにしまう。
腕時計の針は9時45分を指していた。
長野県警の今回の捜査班との待ち合わせ時間は10時きっかり。コンビニで小さい飲み物だけを買って、今さっき飲み干してしまった。
新幹線に乗るのは久しぶりだった。あの耳が閉じるような感覚は慣れたものだと思っていたけれど、そうでもないらしい。
現在の私の脳みそは長時間の移動と頭痛で軽く悲鳴を上げていた。近くにドラッグストアがあったはずだから頭痛薬を買いに行っても今ならまだ間に合う。
そう思って待ち合わせ場所から離れたのが、どうやら私の運の尽きだったらしい。
9時55分、約束の時間の5分前だというのに、待ち人来ず。
隣りに立っている敢助くんは眉間にシワが寄っていた。
新幹線の時刻的に、30分前には長野駅についていたであろう待ち人はなぜか忽然と姿を消していた。
2人に待機をお願いして、とりあえず周辺を歩いてみることにした。
そもそも応援を要請しただけに、容姿や名前を聞いているわけではないので簡単には判別できないかもしれないが。
___そんなことを考えていた矢先、突如女性と思われる叫び声が聞こえてきた。
声の主の方角は百貨店の方。
とにかく、敢助くんに一報を入れながら走り出した。
おかしいな、頭痛薬を買っただけなんだけど。
コナン君に影響されたのだろうか、私の事件へのエンカウント率が謎に高くなっている気がする。気のせいであれ。
そんな気休めにもならない自己ツッコミをしながら、血を流している女性へ近寄った。
幸い、脈はまだあったのでとりあえず救急車を呼ぶ。
とりあえず警察手帳を見せて周囲から人を避けさせ、応急処置だけを施す。出血死しないといいけれど…。
そんなことを考えながら、長野県警にコールをかけた。
なんとなくではあるが、恐らくこれが今長野で起こっている”無差別通り魔事件”なのだろう。
先方いわく、私を迎えに来ている捜一の人たちがすぐ駆けつけるらしい。有能だなぁ。
叫び声が聞こえてからの行動が遅れたもので、犯人らしき人はすでに退散している模様。今手元に残されている手がかりは、変にギザギザした刃物で刺されたであろう被害者の傷跡と、
そう呟いたとき、どこからか誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
もう来たのか、と思って視線をそちらに向けた時、あまりに見覚えのあるタイプの顔の人がこちらへと向かってきていた。
…まさか今日になって再会するなんて。
はぁ、と小さくため息を吐いて立ち上がった。
本当は初対面なんかじゃないんだけどね
________諸伏、高明
景光さんの、お兄さん。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。