神鬼化した上に強欲な夢想、織り成す創成を発動し、一瞬で透き通る世界に入る。それほどに私は集中していた。
5つの脳味噌と7つの心臓全てに大量の突きを放ち、その上で世界に対する誤認識を起こし、急所に対して大きなダメージを与える。
更に型を発動し、燕斬る傲慢で5つの脳と7つの心臓を一気に潰した上で、頸を斬る。が、無惨はそれでは死なないらしい。
試してはみたが、情報通りの結果だった。
無惨は背中から管を生やそうとしていた。その全てを、刀を振ることなく、抉るように斬った。世界に対する誤認識が生んだ正体は「神経接続部位破壊の強制」。神経が強制的に破壊されたことにより無惨は血鬼術としての形状変化の支配を耐えきれず、操作していた根元から崩壊したということだ。
無惨は驚愕した。1000年もの間、自身の体を扱い、磨きかかったはずの身体操作が、今、全くできなかったことに。
それでも、無惨は鬼の始祖。足に力を込め、一気に日輪刀を持つ右腕を切断しようと突進する。その速度は私の反応速度と同等であり、僅かに鬼の力に慣れていた無惨が、私の体に到達する。
上腕二頭筋を爪で突き刺し、その勢いを使い、小さな衝撃波を発生させる。腕は衝撃波により、一瞬にして消し飛んだ。
無惨は腕を吹き飛ばしたことで、心の中に多少の余裕を持つ。
無惨は正面から、ゆっくりと近づいてくる。
私は吹き飛ばされた腕の向きを確認すると、一切の音、気配を立てずに日輪刀を持った腕を無理矢理引く。正式に言えば、「引力を発生させた」。
無惨は引力に気づかないまま、正面から歩いてくる。
腕を一気に引き、思いっきりぶつかる。それと共に結合させた私は、日輪刀を改めて構えて型を発動する。
その言葉と共に、無惨の体は既に私の後ろにあった。否、私が無惨を通り過ぎた。そのついでと言うとなんだが、通り過ぎる際に無惨の体を千切りにした。
それでも無惨は死なない。血鬼術を発動しようにも、常に縁の終が発動しているため、血鬼術は使用するだけ逆効果となる。
今まで見てきた鬼狩りとは明らかに違う、能力を持つ者。その異様な存在を見て、無惨は変化を恐れた。「変化に淘汰されるのではないか?」と。
1000年の記憶は強烈なもので満ち溢れていた。応仁の乱から始まった乱世の時代、開国から始まった怒涛の進化の時代、そして戦争の時代。無惨は環境の変化には順応してきた。が、自身そのものが変化することはなかった。が、それが今、変化せざるを得ない状況へと変わりつつあった。
あなたは無惨を、ただ蹂躙していた。圧倒的な優位な状況下で、ただ蹂躙する。反撃の猶予など、与える間もなく。
無惨は逃げようとしていた。逃げるしかないと、そう判断した。今、あなたと戦えば、すぐに夜明けが来てしまうと。
無惨はそう大きな声で、焦ったように言うと、空から襖が現れ、そこから3体の鬼が現れた。
3体の鬼はすぐさま攻撃を始める。その隙に無惨は全速力で逃走を開始する。
あなたは日輪刀で一振り。瞬間、3体の鬼は息をする間もなく吹き飛ばされる。
無惨との最短距離の道を開拓したあなたは、逃げる無惨に追いつく速度で走る。
無惨の四肢を切り離し、即座に再生できないよう、細切れにする。
ベンッ
1つ、琵琶の音が鳴る。無惨はその音と共に、姿を消す。
振り返ると、3体の鬼は消えていた。さっきの音と共に消えたと推測される。
私は周りを見る。すると、そこは変わり果てた、瓦礫で埋め尽くされた渋谷。
無惨を殺せなかったことは悔しい。それに加え、神鬼としての能力を活かしきれなかった。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!